駒として【過去編】 ページ23
微かに震えているAに歩み寄り、三成は強引に彼女の手を引いてその場を立ち去った。
人は過度の不安に陥ると、冷静さを失い目の前のことしか見えなくなる。
それは深海に沈んでいくものと同じイメージであろう。
不安が募り、溜まり、やがて道を踏み外したことにすら気が付かず、深い闇に沈んでいく。
それは穢れ無く、真面目で純粋な者こそ陥りやすい。
＊＊＊＊＊＊＊
遡ること数年前。
その日はAが嫁いでくる前日のことだった。
半兵衛「Aちゃんと顔合わせはしたんだっけ？」
政務に使う資料を運んでいた三成は、「はい」と短く返事をした。
半兵衛「僕はその場に行けなかったけど、君なりに彼女はどう思う？」
三成「どう、と申しますと？」
半兵衛「例えば、第一印象とか」
半兵衛が三成にこのような問いかけをするのには理由があった。
Aの父親の兄弟、言わばAの叔父が以前敵方に寝返ったという話があり、一族共に結束力の高い彼らはもしかしたら豊臣を裏切るかもしれないという噂が流れていた。
それを防ぐための政略結婚、という肩書きだが半兵衛には一つだけ気がかりなことが。
それは、Aの一族が豊臣を裏切った場合、Aの行動次第では彼女を人質としては使えないかもしれないということである。
正室の子、もしくは愛娘ならば人質としては使えるだろう。しかし、Aは側室の子で父親が彼女をどう扱っているのかは全く想像できない。
この戦国の世、正室側室がいるのならば当然、子はいくらでもいる。
そうなれば愛情に偏りが生じ、使い捨てとして扱われる子もいる。
使い捨てを人質として出されても、それは人質としては成り立たない。
もしかしたらAもその類ではないかと半兵衛は考えていたのだ。
三成「…顔合わせをしたのは事実ですが、私はその者とは一切会話していません」
半兵衛「え？」
三成「恐らくアレは使い捨てかと」
半兵衛「…やっぱりか。三成君、Aちゃんの事は全て君に任せるよ。明日嫁いでくるだろうけど、婚儀をするかしないかは君の自由にしていい」
三成「承知しました」
可哀想だけど、と半兵衛は踵を返し、主である豊臣秀吉の元へ向かった。
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三楓(プロフ) - みつさん» コメありがとうございます(*´∀｀*)更新頑張ります！ (2017年8月15日 21時) (
レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
みつ - 面白いです。これからも更新頑張ってください。楽しみに待ってます！ (2017年8月15日 17時) (レス) id: c881b9ad42 (このIDを非表示/違反報告)
彩月いろは(プロフ) - 三楓さん» ありがとうございます！ (2017年8月8日 20時) (レス) id: 676cb16bcb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 彩月いろはさん» コメありがとうございます(*´∀｀*)猿飛佐助オチですね！内容作成にしばらく時間がかかると思いますが、前向きに検討させて頂きます。 (2017年8月8日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
彩月いろは(プロフ) - 三楓さん、お気に入り作者100人、おめでとうございます！そこで小説のリクエストなのですが、猿飛佐助オチを書いてほしいな･･･と思いますが出来ますでしょうか？ (2017年8月8日 20時) (レス) id: 676cb16bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三楓 | 作成日時：2017年7月15日 11時
