忍と領主様(幼)参 ページ12
再び城下町へ出て、Aを探す風魔は表情にこそ出さないが面倒だと思っていた。
さっさと帰ればよかったものの、一体どこで何をしているのやら...。
こつんっ、と道に落ちていた石を草鞋で蹴ったのもお構い無しにAが行きそうな場所を探した。
甘味処、遊戯店、飲食店なども回ってみたが、Aらしき子の姿は見当たらない。
「お嬢ちゃん、もう暗くなるから家に帰りな」
ふと、そんな声が小太郎の耳に入った。
A「...嫌だ」
「父上や母上殿も心配しておられるぞ?」
A「父上と母上なんて...私がいない方がいいと思ってるんだもん!」
門番との会話で急に声を荒らげたAの表情は見えない。
ただそれでも、その小さな身体は震えていた。
A「だから、立派なお殿様になって私を認めてもらう...。そのためには仲間を大事にしなさいってじーさん言ってた!だからこたろー見つけるまで帰らない」
その時小太郎は、自分が何を思っていたのか分からない。
無意識に、彼の足はAの方に向いていた。
「そう言われてもなぁ...あ、風魔殿」
Aの相手をしていた門番は、小太郎にぺこりと頭を下げた。
A「こたろー!」
自分に抱きついてきたAはとても嬉しそうに微笑んだ。
A「よかった。こたろーが迷子になったのかと思ったよ」
小太郎「【帰りましょうA様】」
A「うん!」
Aの小さな手を繋ぎ、小太郎は門番に頭を下げて城へ戻った。
*******
城に戻るなり、よほど疲れたのか小太郎の背で眠るAを見て氏政は「帰ってきたか」と笑顔で二人を出迎えた。
氏政「ほほっ、Aがそんなことを...」
氏政は、小太郎の話(紙に書いた文章)を読みながら縁側で茶をすすった。
氏政「お主には話していなかったかのぉ...。Aには弟がおってな、もちろん嫡男であるから両親は弟を何より可愛がっておるのじゃ。じゃが、弟を可愛がる分Aは蔑ろにされる」
小太郎「...」
氏政「暴力は振るわれぬが、ただ扱われ方に差があるのじゃ。会うたびに無理をして笑うAが哀れで...老婆心でたまにここに来させるようになった。まあ、結果がこうじゃが」
そういうと氏政は苦笑した。
氏政「次期当主に、という話も『自分はここでは必要とされている』と思って欲しかったんじゃ。まだ無垢な童がこんな世の中で悲しく死ぬのも可哀想じゃろ?」
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天里三笠(プロフ) - どういたしまして (2018年1月10日 16時) (レス) id: b5fd42ea38 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 天里三笠さん» 誤字の指摘ありがとうございますm(_ _)m訂正しました。 (2018年1月10日 16時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
天里三笠(プロフ) - こんにちは。漢字のミスです。幼少期のストーリーで、何かの表紙に助けたわけでもない、のひょうしは拍子、です。 (2018年1月10日 13時) (レス) id: b5fd42ea38 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 佐助君のノリ&ツッコミ、面白かったです^_^最後、佐助君が可愛そうな気が・・・・・。楽しくて、サクサク読めました^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月7日 21時) (レス) id: 955180b2fd (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - まゆさん» コメありがとうございます(*´∀`*)更新頑張ります! (2017年10月18日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2017年7月8日 23時