面会 ページ35
「聞いちゃったかしら」
なんとも言えない顔でAはうなずく。
「そう……二回も真面目に聞かせたくなかったけど」
Aは二人にノートを見せた。
おじいちゃんが呼んでる
常闇くんのこと
「え? なんで俺のこと……」
「おばあちゃんに知られちゃったのね」
申し訳なさそうに頭をさげる。
「仕方ないわ。あなた行ってきなさい。
もちろん拒否権はないわよ」
逃げる前に釘を打たれてしまった。分かりました、と席を立ったときおばさんが付け加える。
「受け答えには気をつけてね」
そんなたたみかけないでほしいと思いながらAのあとに部屋を出た。
冷めた紅茶を一人で飲む。
きっと、あのカラスのような子ならおじいちゃん相手でも大丈夫だろう。
あんなにキレイな目でAのことを想ってくれるのだ。信じる以外なにがある。
消えてしまったアロマキャンドルの火は、いつのまにか赤々と燃えていた。
――――――――――――
向かったのは和室だった。畳を踏むと日本人の性なのかスッと背筋が伸びる。
ジャムがある漆塗りの座卓にいるのは、白髪混じりの筋肉質な男の人だった。肌は黒く焼け健康そのものの彼をAのおじいさんとは呼べなかった。
その隣には二まわりも小さいかわいらしいおばあさんが座っていた。
Aが座布団に腰を下ろしたので自分もそうする。恐る恐る顔をあげ男性と目が合うと、全身が固まった。
動けない……。
石像のようになった常闇を見てAは慌てた。
サッ)おじいちゃん!
「待っとれ、すぐ戻る」
祖父の言った通り少したつと、水からあがってきたときのように常闇は荒く息をした。
「悪いなあんちゃん。だがお前が悪いぞ。なんせ俺の目を見ちまったんだからなあ。
全く、俺も歳とった。縛れる時間が短くなってやがる」
Aがクスリと笑った。そのくだけた笑みに常闇はこんな顔するんだ、と妙にドキッとする。
そのときおばあさんが男性に耳打ちした。するとダン、と座卓を叩いて叫んだ。
「Aは嫁にやらんぞぉ!」
「へぁ!」
「なんてな。いい反応するなあ、お前。一度やってみたかったんだよ。
だが本気なのは変わらんから肝に命じとけよ?」
固まったり驚いたりした後の常闇は苦笑いしかできなかった。
今回そんな祖父とお話しします。
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ちづる(プロフ) - いきなりリプ失礼します。キャラクターたちの心情や常闇くんの優しさ、夢主ちゃんの考え方めちゃくちゃ好きだと思いました。続編が読みたいのが本心なのですが... (2021年5月10日 5時) (レス) id: 97693b4be7 (このIDを非表示/違反報告)
ホープローズ - 速報!本日は私、ホープローズの誕生日なのでヴィラン連合・プロヒーロー・ヒーローの卵達からの祝いの言葉を貰いたいです。お願いします。 (2019年8月23日 12時) (レス) id: 681e9ae1c6 (このIDを非表示/違反報告)
はづき(プロフ) - 常闇くん。常闇くん。ホントに好きです。大好きです。最高かよ( ˙-˙ ) (2019年7月31日 12時) (レス) id: 6ca8581b98 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - んぱ(・-・)!← (2019年6月18日 22時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
響香(プロフ) - 常闇くんチョー好きです!これからも宜しくお願いします! (2019年6月12日 17時) (レス) id: b61ceed5ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蔦虎 | 作成日時:2018年4月22日 0時