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あなたと静かに ページ20

「声がでないだけでなぜ人じゃないんだ。感情があって優しさもある。俺は少なくとも人にしか見えない」

 どうして!? そうやって……!

 Aは常闇の胸ぐらをつかんで揺すった。

 嘘だ! そんなこと思ってないくせに!

 そうやって口先だけ言って、あとは笑ってるんでしょ! しゃべれない奴って、分かるんだから!

 みんなそうなんだよ!


 嫌い。常闇くんなんか、大っ嫌い!


 声があったならそう叫んでいただろう。しかし、どう口を動かしても彼に思いは伝わらない。

 実際、常闇は揺すられている理由が分からなかった。顔をぐちゃぐちゃにして怒りの目をしたAをただ見ることしかできなかった。


 これほど静かな憤怒があるだろうか。


 そっと涙をぬぐってやる。するとAの動きが止まった。見つめれば、耐えきれなくなったのか、胸に飛び込んできて激しく泣いた。

 その小さな体を抱けば温かさが伝わってくる。それは、まぐれもなく人の体温であり、Aの体温だった。






 ごめんなさい

 落ち着いたAはスケッチブックの最後を開く。

「いや、謝らなくていい。お前こそ大丈夫か」

 Aは目をパチクリさせた。

 怒らないの?

「……怒ったらもっとお前が悲しむだろう」

 どうしよう。また涙が出てきた。

「なあ、お前はなぜ自分のことを人じゃない、なんて言うんだ」

 ペンを持つ。

 みんなと対等じゃないから

「対等か……お前は何を望む」


 何を、望む?


 私はけなされたくない。バカにされたくない。

 あの、同情するような、困った目を見たくない。

 だけど、ペンは動かなかった。

「さっきの俺の言葉、覚えてるか」

 はっと顔を上げる。

「お前は気にくわなかったようだが、撤回する気はない。あれは虚偽ない俺の本心だからな。


 だから、誰にもお前のことを『人じゃない』なんて言わせない。絶対に言わせない」

 泣き顔を隠すようにスケッチブックを見せる。

 常闇くんは他の人とちがう

「あ〜、俺が烏みたいだから……」

 思いっきり首を振る。

 私のこと 受け入れてくれた

「受け入れる、か。当然だろう。AはA、ただそれだけだ」

 常闇くんを しんじる

 私が人だって

「……そうか」

 常闇は微笑んでそれだけつぶやいた。

 これ以上言葉を飾る必要はない。


 目の前の彼女が笑顔を見せているから。

仲良く傘をさす→←小さな声は木の下で



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ちづる(プロフ) - いきなりリプ失礼します。キャラクターたちの心情や常闇くんの優しさ、夢主ちゃんの考え方めちゃくちゃ好きだと思いました。続編が読みたいのが本心なのですが... (2021年5月10日 5時) (レス) id: 97693b4be7 (このIDを非表示/違反報告)
ホープローズ - 速報!本日は私、ホープローズの誕生日なのでヴィラン連合・プロヒーロー・ヒーローの卵達からの祝いの言葉を貰いたいです。お願いします。 (2019年8月23日 12時) (レス) id: 681e9ae1c6 (このIDを非表示/違反報告)
はづき(プロフ) - 常闇くん。常闇くん。ホントに好きです。大好きです。最高かよ( ˙-˙ ) (2019年7月31日 12時) (レス) id: 6ca8581b98 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - んぱ(・-・)!← (2019年6月18日 22時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
響香(プロフ) - 常闇くんチョー好きです!これからも宜しくお願いします! (2019年6月12日 17時) (レス) id: b61ceed5ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蔦虎 | 作成日時:2018年4月22日 0時

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