昔話 ページ40
「オウ! イレイザー、まだ仕事してんのか〜?」
「声でかいな。ここ職員室だぞ」
寄ってきたプレゼント・マイクは声をひそめる。
「何つれない顔してんだよ。悩み事でもあんのか?」
「別に。うるさいからどっかいけ」
「その手にあるのはなんだよ。きれいに切れてんな」
「例の女子生徒のピンだよ」
ああ、とマイクは納得する。
「……なあ、覚えてるか。俺らのために足なくした先生」
「もちろん覚えてるぜ。毎日きっつーいことやらせやがった先生だろ?
あの人がいなかったら今の俺たちはいなかったけどよ、ちょっと幼稚だったよな」
「まあ、短距離走で生徒に勝ったらガッツポーズしてたくらいだし」
「それで煽ってくっから、こちとら腹立ちMAXだったけどな」
近くの椅子に座ったマイクと笑う。
「ってなんだよ、思い出話なんか急にふりやがってさ。懐かしいだろ」
「いや、今考えてたんだよ。あの人ならどうするかって」
「どういうことだよ」
相澤はAがクラス内で微妙な立場にいること、自分たちの目的(障害者に慣れさせること)が達成できていないことをを伝えた。マイクは黙りこむ。
「俺は思うんだ。遠回りにこんなピン使っていても何も変わらない。たとえ会議で決まったものでも、合理的じゃない。
かといって何が正解なのかも分からない。
……あの人だったら正解以前に行動するだろうな」
自分の勇気のなさを嘲るように言い放つ。
「イレイザーにしては先生として真面目に思い詰めてるな」
「まあな。少なからずあの人を見返してやりたいし」
マイクは眉をよせた。
「アドバイスしてやりてぇがしようがないぜ。
だって気づかせるためにおおごとにしてもその生徒が傷つくだけだろ。類似の映像見せたってな、自分の欠点公にさらされるわけだし。
お前の場合、生徒間でぶつかり合うのも嫌なんだろ。そのあとが不安で」
「……ああ。今のところヤバイ奴はいるが」
「パチン)爆豪か」
「ピンポン」
「よっしゃ!」
「じゃねえよ」
「だとするとよ、お前どうすんだ。爆豪にさりげなく注意すんのか」
「……いや、さらに逆上して衝突がはやまるかもしれない」
「じゃあもう見守るっていう手段しかないぜ。俺たちはあの先生じゃねえんだ。手札が少なすぎるのさ」
そしてその手札をきる勇気もないんだ。
「もう少し様子を見るか」
そう言い残して相澤は立ち上がった。
その選択が災いを起こすとは知らずに。
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ちづる(プロフ) - いきなりリプ失礼します。キャラクターたちの心情や常闇くんの優しさ、夢主ちゃんの考え方めちゃくちゃ好きだと思いました。続編が読みたいのが本心なのですが... (2021年5月10日 5時) (レス) id: 97693b4be7 (このIDを非表示/違反報告)
ホープローズ - 速報!本日は私、ホープローズの誕生日なのでヴィラン連合・プロヒーロー・ヒーローの卵達からの祝いの言葉を貰いたいです。お願いします。 (2019年8月23日 12時) (レス) id: 681e9ae1c6 (このIDを非表示/違反報告)
はづき(プロフ) - 常闇くん。常闇くん。ホントに好きです。大好きです。最高かよ( ˙-˙ ) (2019年7月31日 12時) (レス) id: 6ca8581b98 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - んぱ(・-・)!← (2019年6月18日 22時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
響香(プロフ) - 常闇くんチョー好きです!これからも宜しくお願いします! (2019年6月12日 17時) (レス) id: b61ceed5ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蔦虎 | 作成日時:2018年4月22日 0時