個性と五体満足 ページ37
おじさんが手の中でまわすナイフを見て常闇はハッとした。
「Aと同じナイフ……」
「おっ、目のつけどころいいな。そうだ、これなAのやつと同じなんだよ。
切れ味抜群、投げやすい軽さ。俺が研究して作ったんだ。」
「ナイフを作れるんですか」
「一応カトラリーの工場持ってるからな」
……持ってる?
「もしかして社長、とかですか?」
「ああ、ただデスクワークは嫌いでできねえから全部部下にまわしてるがな。表だけよ社長は。
……足が潰れてなけりゃあ、今頃こんなことしてねえんだけどな」
おじさんは義足の足をさする。
「雄英もバカだよな。この俺を足なくしただけで解雇するなんてよ。
……自慢じゃねえがAの身のこなしすげえだろ。もっとも、ヒーローにならせるためじゃねえがな。
ゆうゆうとヒーロー目指してる奴らにも勝てるように、生きる選択肢が増えるように鍛えたんだ。
教員のときも『一芸だけじゃあヒーローは務まらんぞぉ!』って同じように生徒を鍛えたら批判がきてな。まあ実際、今活躍しているのはそいつらだから陰ながら鼻が高いぜ」
(どうりで相澤先生が強いわけだ)
「ただなぁ……教え子が俺よりも早く死んでいくんだよ。
今もどこかでプツッと命が切れている。それも、事故じゃなくて己のしんずいを突き通して。俺は悲しくてならねえよ。
未来ある若いもんが早く死んでいくんだ。これじゃあまるで戦争中だよ。お前殉職したいか? なわけねえだろ。本人にとっては幸せだろうが残された周りを見れば、なあ。
Aをそんな苦しまみれの道に入れたくねえ。今までも傷ついてきたのによお。
この世界はまだ障害者を受け入れていない。無個性においてはどんどん拒絶されていく。
なあ、おかしいと思わないか、ヒーロー志望のあんちゃんよお」
何も、答えられなかった。今までの常識を全て壊されたような、信じていたものを否定されたような気がして恐ろしさを感じた。
「人って何なんだろうな……個性を持ってて五体満足の奴らしかこの世界に生きちゃいけねえのかな。
あんちゃん、本当にヒーローを目指すなら応援はするぜ。Aが認めた奴だからな。
だが悲しみはつくるなよ?」
ほりの深い顔が淡く笑った。
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ちづる(プロフ) - いきなりリプ失礼します。キャラクターたちの心情や常闇くんの優しさ、夢主ちゃんの考え方めちゃくちゃ好きだと思いました。続編が読みたいのが本心なのですが... (2021年5月10日 5時) (レス) id: 97693b4be7 (このIDを非表示/違反報告)
ホープローズ - 速報!本日は私、ホープローズの誕生日なのでヴィラン連合・プロヒーロー・ヒーローの卵達からの祝いの言葉を貰いたいです。お願いします。 (2019年8月23日 12時) (レス) id: 681e9ae1c6 (このIDを非表示/違反報告)
はづき(プロフ) - 常闇くん。常闇くん。ホントに好きです。大好きです。最高かよ( ˙-˙ ) (2019年7月31日 12時) (レス) id: 6ca8581b98 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - んぱ(・-・)!← (2019年6月18日 22時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
響香(プロフ) - 常闇くんチョー好きです!これからも宜しくお願いします! (2019年6月12日 17時) (レス) id: b61ceed5ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蔦虎 | 作成日時:2018年4月22日 0時