大好きな君からの手紙【オリジナル短編集】

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この世界が御伽噺の中だと理解したのは、お前もよく知ってる俺の父さんからの言葉が原因だった。


警官に捕まって、家を去る時に父さんは、アイツは言ったんだ。


『お前も悪者(こっちがわ)だろ』って。


父さんが家を去った瞬間、俺の知らない記憶が流れ込んできた。


体の震えが止まらなかったのを今でも覚えてる。


頭が痛くて吐き気が止まらなくて呼吸が出来なくて。(今考えると多分過呼吸だったんだろうって思う。)


その後俺は考えた。


俺が生きる方法を、アカリを巻き込まない方法を、平和に物語を終わらせる方法を。


だけど、どうしようもなかった。


俺は無力で馬鹿だから、アカリが無事に幸せに生きられる方法は、これしか思いつかなかったんだ。


物語通りに、シナリオ通りに生きる。


王子なら、お前を幸せに出来る。


悪役は、俺は、王子に敗れて消える。


それがこの物語のHappy endだから。


お前に幸せになって欲しいから、死なないで欲しいから、俺はお前と居られない。


でも、俺は確かにお前が、アカリが好きだった。


自分の命よりアカリの幸せを優先させるくらいには好きだった。


愛してる。

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