Unrequited Love【兵頭十座・碓氷真澄】 (ページ22)

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真澄くんが帰ってからも、雨が止む気配はなく、雷の音も強くなる一方だ。

こんなことなら、真澄くんと一緒に意地でも帰れば良かった。

誰もいない、薄暗い教会は少し怖い。

『…誰か…』

誰か来てくれないかな、と思っても

こんな場所に来てくれるわけはない。

私は耳を塞ぎ、踞るようにして雷が止むのを待っていた。

そんな時、私の前に少し明かりが差した。

『…え…』

教会の扉が開いていて、シルエットでしかわからなかったが、誰かがこちらに近づいてくる。

真澄くんではないことは確かだ。

『誰ですか…？』

恐る恐るそう声を上げると、一気に腕を引かれ誰かの胸の中に収まった。

「A、大丈夫か」

『…へ…十座くん…？』

低く、安心させるような声は十座くんのものだ。

抱き締める体は濡れていて、少し息も切れている。

『…なんでここに？』

十「真澄に話聞いて、急いできた。雷、苦手なんだろ？」

『…うん。ありがとう』

落ち着かせるように言うその声が、心地よかった。

私のために来てくれた十座くんに心が救われた。

『…ほんと、バカだよね。好きな人誘って出掛けられたのに、結局選ばれたのはお姉ちゃんだった！わかってたけどね』

十「…無理して笑わなくていい」

別に、無理して笑ってるわけじゃないのに、十座くんの言葉に何故だか涙が溢れた。

一度溢れてしまったら止まらなくて、十座くんはただ黙って抱き締めてくれていた。

もうどれくらい泣いただろう、十座くんの肩が雨で濡れたのか、私の涙で濡れたのかわからないくらい濡れていた。

さすがに申し訳なくて、離れようとした時、私より強い力でより一層抱き締められた。

十「………きだ…」

『…なんて…？』

上手く聞き取れなくて、聞き返す。

十「俺は、Aのことが好きだ」

『…え…』

十「…俺がAを想う気持ちは誰にも負けねぇ自信がある。俺の方がAを幸せにしてやれる」

ずっと、寂しかった。

MANKAI寮に来てから、皆は優しいけれど、やっぱり皆お姉ちゃんを慕っていて

私もそんなお姉ちゃんに憧れていたけれど

好きな人からも愛されず、結局どこに行っても私は二番目だった。

だから、十座くんの言葉で

さっきまで聞こえていた雷は聞こえず

変わりに、私の胸の音だけが鳴り響いていた。

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