強引。 ページ7
食事が終わると、師範は私に一枚の封筒を差し出した。中身は手紙か書類か報告書か、宛先は胡蝶しのぶ宛となっている。
「ええと、これは......」
「この前確認した、人の血に影響を及ぼす血鬼術についての報告書が中に入っている。それを明日、蝶屋敷に行って届けろ。絶対に失くすな」
「鴉を使わないんですか?」
「俺の鴉は他の所へ飛ばしている。お前と鴉では殆ど違いもない。鴉の方が足が早い分優秀だがな」
他の鴉を使えばいいのに......と思ったが、恐らくこれは師範なりの気の使い方だ。蝶屋敷には私の同期が多く住んでいるから、私の口下手を思ってたまには同期と話して来いということなのだろう。師範が心配しなくてもそれなりに会話くらいは交わしているつもりだが、普段基本的に1人で食事をとっているのを知っての心配だろうか。
「御意。きちんと届けて参ります」
「俺は見回りに出る。屋敷の戸締りをしておけ」
「えっ、もう出られるのですか?今日帰ってきたばかりなのですから、せめて今日はゆっくり......」
「昼に仮眠はとっている。俺の身を案じるにはあと20年は早いぞ愚弟子が、とっとと戸締りをして寝ろ」
そう言って師匠は目にもとまらぬ速さで屋敷を出た。柱が多忙であるのはここ数年で重々承知の上だが、最近は特に殆ど休息を取っている様子が見られない。師を心配する気持ちはあるが、心配しても自分のことだけに集中しろと竹刀で背中をどついてくるので表にすら出せないのだ。
というか、勢いで封筒を受け取ってしまったが、蝶屋敷って......
(炭治郎も、居るんじゃ......)
✿*❀✿*❀٭✿*❀٭✿
そろりと影から蝶屋敷の中を覗く。相変わらずここは蝶が多くて、なんだかきらきらとしていて苦手だ。任務で大怪我をした時にここに運び込まれたことがあったけど、ここに住んでいる女の子はみな可愛らしくて、綺麗で、だからこそ苦手だった。
いや、もちろんこの屋敷は何も悪くないし、あの可愛い女の子たちだって微塵も悪くない。全ては、卑屈で根暗な私が悪いのである。
いやしかし、私が今避けたい事象は、あの女の子たちと遭遇することではない。私が避けたいのはもちろん......
「こんな所で何をしているんだ?A」
「ひっ___!」
飛び上がって振り向くとそこには、私が女の子たちよりずっとずっと避けたがっていた少年___炭治郎が、笑顔で立っていた。
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時