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「んん〜......」
「大丈夫か?A。少し揺れるかもしれないが、すぐに屋敷まで送るから......」
するとAは、ぽやんとした顔でこちらを見上げてきた。熱っぽい視線にどきりとする。
「炭治郎......?たんじろ、だよね?」
「そう、だが......」
「んふふ〜、......炭治郎だぁ〜」
蕩けるような笑みを浮かべてそう言ったAは、何故だか嬉しそうに俺の胸へと擦り寄ってきた。甘える猫のような仕草に理性の堤防が急に壊れかかる。ぴしり、と音を立ててヒビが入った。
「炭治郎だー、炭治郎がいるー、うふふ......炭治郎、ねえ、もっとくっついていい?」
「......ちょっと待ってくれ、心頭滅却する時間を」
頭の中の俺の化身、もとい良心たちが「煩悩よ!去れ!!」と喚き散らしている。ああ俺が一番そう叫びたい。煩悩よ去ってくれ。この胸に縋り付く可愛さの塊へ伸びそうになる手を止めてくれ。
「んー、ねえー、炭治郎、わたし、たんじろーがいい」
「えっ......?」
「炭治郎以外、怖いんだよー。きいてよお、炭治郎......善逸もね、さっきの人もねえ、こわいんだあ。炭治郎は、ぎゅーでもちゅーでも、ふふ、暖かくて、......おちつく」
衝撃的なことばかり言いながら、俺に擦り寄って抱き着いてくるのだからたまらない。色々と問いただしたいところはあったが、口を開いたり彼女に視線を合わせるだけでも、そのまま唇を奪ってこの場で自分のものにしたくなってしまうからと視線を交わさなかった。
すると腕の中の可愛らしい人は、ねえねえと胸元をつついてきて、「たんじろお......」と拗ねた声を出すのだからたまらない。酒とは恐ろしいものだ。改めてそう思った。
「おこって、るー?ごめんねぇ、ごめんたんじろお、嫌いにならないで......私のこと嫌いにならないで。嫌わないで、傍に居て。置いて行かないで。炭治郎......」
「A」
いつまで経っても返事を返さない俺を、怒っていると勘違いしたのか涙目でわんわんと抱き着いてくる彼女の名前を呼んで、真っ直ぐにそちらを見下ろした。ひとつだけ、許容できない言葉があったのだ。
「俺はお前を嫌わないよ。Aが望むなら、ずっと傍に居る。俺はAが好きだ」
「......ほんとお?」
「本当だ」
「私のこと、好き?」
「好きだ」
「だきしめて、私のこと」
横抱きの状態から一度だけゆっくり彼女を地面に下ろして、そのまま強く抱き締めた。壊さないように、壊れないように、そっと
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時