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「わ、分かった。善逸すまない、ありがとう。Aを送ったらすぐに俺も戻って来るから、一緒に帰ろう。流石に善逸を置いて一人では帰れないよ」
「ううう......本当だな?絶対来いよ?俺を見捨てるなよ?俺が二回吐くまでには戻って来いよ!!」
善逸に背を押される形で廊下に出た。一回は吐くのが確定してるのか......これは早々に戻って連れ出してやらないと善逸が可哀想だ。
Aの気配も匂いも当然覚えているが、何処も彼処も宴会特有のありとあらゆる匂いがして分かりづらい......早く見付け出さないと、善逸の言っていたとおり、嫌な予感がする。
鬼殺隊の借りていた会場の近くを見て回っていると、一室だけ宴の喧騒が感じられず、薄暗く、かつ人の気配だけは微かに感じられる部屋に足を引かれた。すん、と匂いを嗅ぐと、酒の強い匂いと、それから、覚えのある匂いが鼻孔から肺へ雪崩れこんできた。
「......んじろ......」
微かに鼓膜を揺さぶった声に目を見開き、気が付けば蹴破る勢いで襖を開けていた。すぐには視認出来なかったが、奥の床の間の辺りで、隠れるようにしてもぞもぞと動く人影を見つけた。ぎよっとしてこちらを振り向いた男の顔には見覚えが無かったが、その男の背中越しに見えた顔は見慣れたものだった。
前髪を切ったのか、髪が顔に垂れていても珍しくはっきり目が見えていて、その瞳からはひとすじ、涙が零れていた。生まれてから感じたことの無い種類の激情に駆られ、俺は気が付けばその男の胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。
「何をしていた貴様!!」
ごんっ、と鈍い音がしたので恐らく相手方は頭をぶつけている筈だ。しかしそんなことは考えている余裕がなかった。相手も相当動揺していて、状況が理解出来ていなかったのか「うぇっ、えっ、いや」としどろもどろな様子を見せる。
「答えろ!彼女に何をしていた!!」
「いや、ちょっと、待てよ。何か勘違いしてないか?」
「勘違いだと?彼女からは強い酒の匂いがする!Aは二杯が許容範囲内だと言っていた!それ以上飲むと立っていられなくなるとも聞いた!!それをこんなに強い匂いがするほど飲ませて、暗がりに連れ込んで入口の死角になるような所で組み敷いて、一体何をしていた!!」
「お前......噂の、鬼を連れた隊士か。この子と同期だな。それなら知らないのも仕方ないが、この部屋は行き慣れている人間なら誰でも知ってる休憩所なんだよ。俺は酔った彼女を介抱してただけだ」
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時