いつの間にか求婚を承諾していた【竈門炭治郎】

▼ ページ36

※鬼滅の舞台となっている年代では未成年による飲酒が法律により禁止されていなかったため、本ページ以降は未成年飲酒の描写があります。
※未成年の飲酒は現在法律により禁止されております。当投稿は未成年飲酒を推奨するものでは御座いません。予めご了承ください。



✄-------------------‐✄



「我妻ァ〜酒が進んでねえぞお前ェ、下戸か？下戸はなァ、女にもてねえんだぞお？」

「いやほんとッ、俺酒苦手なんですってば！！」


私の隣から引き剥がされ、この中では年長者らしい顔も名前も知らない隊士に絡まれている善逸を横目で流しつつ、先程からちびちびと仕方なく喉に流している酒を机に置いて俯いた。

この雰囲気、本当に苦手だ......どうにか隙を見つけて抜け出そう。御館様の慈悲深い計らいだということは分かって居るのだが、それでも苦手意識がどうしても勝ってしまう。その益々育ってゆく苦手意識というのは、先程から隣でぺちゃくちゃと休むことなく喋りかけてくるこの年上の隊士のせいでもあるのだが......


「Aちゃん酒進んでないねえ。ほらほらもっと飲んで？今日は無礼講だかんねえ、飲まなきゃ損だよ、ほら」

「はあ......」

「折角御館様がね、用意してくださった場なんだからね。それにさ、ね。さっきからなんか、肩に力、ほら。ずーっと入ってんだよ、力。肩に」


ぽんぽん、と肩に手を回されて叩かれて、肩の力を抜けと言われる。私の肩を強ばらせているのは誰のせいなんだ。頑張って空にした硝子杯にまた酒が注がれて泣きそうになった。綺麗に整えられた芯の太そうな黒髪と、ちょっと腫れぼったい瞼、高い鼻、薄い唇と、今風の流行りの小綺麗な顔をしたその人から目を逸らす。

また肩が縮こまったのを指摘されて、すみません、すみません、と謝りながら咽喉へ酒を流した。嗚呼、嫌だ。帰りたい、家に。早く。


「Aちゃん、伊黒様の継子なんだよねー、凄いなぁほんと。でも大変でしょ、実際」

「いえ、別に......仕事の一環なので」

「偉いねえ、俺なんて中の中ってぐらいの育手の元で修行しても吐いたのにさぁ。いや、毎日吐いてたねえ、ほんと」

「はあ」

「てか絶対大変でしょ。ほんと、なんか、辛いことあったら言ってきてよ。相談乗るしさ」


そう言って彼は私の太腿に手を置いた。

▼→←宴会。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す