▼ ページ26
そもそも彼女は、俺に求婚された覚えすらないという。
貰ってもいいだろうかと聞くと、いいよと返ってきたので、言葉そのままの意味で受け取って、すっかり彼女に受け入れられたものだと思っていたから、好きってどういうこと？などと聞かれた時はたいへん参った。
あまり細かくは聞いていないが、彼女は過去に御両親からあまり愛情を注がれずに育ったとのことで、人から向けられる情に酷く理解が乏しいのだと善逸からちらりと聞いた。あまり家庭のことならば踏み入らない方がいいかと考えて深くは聞かなかったが、最近どうにも、彼女の自虐的な性格は、その過去のことが絡んでいるのではないかと考えるようになった。
Aは自分のことを、根暗で、ひねくれていて、汚い人間だなどと罵る。何度でも言うが、彼女は真っ直ぐで、綺麗で、そしてとても可愛らしい。俺は知っている。たまに、俺以外知らなければいいとすら思ってしまうが、Aにその自覚が全くないのが本当に心配である。
恐らく彼女が俺の想いをそのまま受け入れてくれないのは、彼女が心のどこかで自分はそのような感情を貰い受けるに相応しくない人間だと考えているからだ。こんなにもただ愛しているのにそれを信じて貰えないのは、悲しいを通り越して些か心外である。
......かといって、このままAに迫り続けるのもあまりよろしくない。Aから嫌がっている匂いがしないから、ついつい押して、押して、追い詰めて、追い詰めて、その口から承諾を聞けたら触れてしまう。たまに、衝動に任せてその唇を奪いそうになる時があるが、その時こそAから拒絶される機になるだろうと分かっているので、いつもすんでのところで踏みとどまっている。俺は長男だと頭の中で唱えながら。
それはさておき、はてさてここからどうしたものか。このまま物理的に迫り続けても進展はしないだろう。どうやってAを振り向かせようか、手に入れようか。
善逸はもう既に俺がAを好いていることを知っているだろうし、しのぶさんにはこの間手を繋いでいるところを敢えて見えるようにしておいたし、少しずつ周りに気付かれてきてはいるだろうが、外堀をどれだけ埋めても本人が振り向いてくれなければ意味が無い。
(押しても駄目なら......引く？いや、引いたら、俺がもたなくなる)
結局結論が出ないまま屋敷へ帰ると、新たな任務が舞い込んで来ていたことに気付いて、その準備に追われることとなった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます！新作アンケも失礼しました…！ (2020年11月14日 0時) (
レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ．更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです！！すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…！！続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております！！ (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです！ (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：子@さぶ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2020年10月24日 12時
