▼ ページ23
「はっ、へ、あ」
間抜けな声が次々喉から抜けていく。
肌に当たる唇の感触って、意外と柔らかさが分からないものなんだ、とか、呑気な考えが頭をよぎった。ただ、熱だけは分かりやすかった。それと、とてもくすぐったい。炭治郎の唇に触れられている細胞ひとつひとつが粟立つような感覚がした。
炭治郎はひとつの箇所に口付けると、また少し横にずれて、再度同じような箇所に口付けて......を繰り返していた。唇を離す度に、ちゅ、とか、ぷちゅっ、とか、ちっ、ちぅ、とか、生々しい音が耳のすぐそばで鳴って、鼓膜がどんどん甘い味になる。
なんだか、恋人同士がいちゃついているだとか、そんな触れ合いではなくて、犬が飼い主に懐いているような絵面だと思う。
「っ、ん、は......たん、じろう」
「っ......A、可愛い。とても可愛い。口付けると、そこが真っ赤になって色付くんだ。どんどん甘い匂いになっていくし、......そんなにかわいらしい声で名前を呼ばれたら、本当に、歯止めが聞かなくなってしまう......あぁ、好きだ。もっと触れたい。足りない、A。A、好きだ。もっとしたい」
「え、う、待って、ちょっと、だけ」
「分かった。待つ。でも、あまり待てそうにない。次は、頬に口付けたい。良いか?」
指で頬を撫でられて、またそこに熱が集まる。顔、近い。炭治郎の熱が、とても近くに、ある。
「そ、それはいい、けど」
「ありがとう。怖かったら、目を瞑っているといい」
「あ、......」
頬に唇が降りてくると同時に、なんとか目を瞑った。熱の感覚がさっきよりもより鮮明に感じられた。吐息が頬に当たる。甘味の匂いがする。炭治郎の唇が、柔らかくて熱い。触れられるとそこからじんわりと溶け出してしまうような、そんな感覚
「......A、可愛い。近くで見ると、益々可愛いぞ」
「そんな、こと、ない。私、可愛くなんか」
「いいや、可愛い。綺麗だ。今日も俺はAが好きだ。明日も明後日もその先もずっと好きだ。Aはずっと可愛くて、ずっと綺麗だ」
「や、やだ。炭治郎、離して、お願い。待って」
「すまない。もう少しだけ、このままで......
熱に潤んだ瞳からほろっと涙が零れ落ちたが、それすら炭治郎の唇に掬われた。
頭がおかしくなりそうだ。甘さばかりを注ぎ込まれて、もう、ぐずぐずだ。本当に、どうにかなってしまいそう。
(あと少しで......Aの匂いが、俺と同じになる)
2119人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時