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画面を見てみると治くんからのLINE通話だった。ちょっとびっくりした、まさか昼にかけてくるとは。昼休憩中なのだろうか、何かあったのかな、なんて思いつつ少し逸る気持ちを抑えて電話に出た。もしもし、の声はきっと少し上ずっていた。
「もしもし、治くん?どうしたの?」
『……A』
「うん」
『Aのめしが食いたい……』
なんじゃそりゃ、とずっこけそうになった。
こんなお昼時に、なに。っていうかなんちゅう声出してんの。今にも死にそうな人の声だよそれ。
「明後日なんか作って行くね。東京のお土産買って帰るし。あ、何がいい?みんなにも聞いて欲しいな。角名くんと銀島くんって苦手なものあったっけ」
『俺はなんでもいい』
「だから角名くんと銀島くんだってば」
っていうか喋りたいことが沢山ある。昨日の写真なんなのあれ、とか。今何してるの、とか。東京の強豪の人たちがね、とか。烏野っていうチームがいてね、とか。何から喋ろうか迷って言葉に詰まると、私の手からケータイがすっと離れて取り上げられた。
えっと声を上げて振り向くと、そこにはさっきまで話に花を咲かせながらもぐもぐご飯を食べていたはずのてつろーが居て、私のケータイの通話口に向かって「あーもしもし、ドーモ?」なんて言っている。ちょっと待って何してんのなんで治くんと話そうとしてるの。
「ボクAの幼馴染で保護者の黒尾鉄朗っていいますーどうも。いつもAがおせわになっておりますー」
「ちょっ、てつろー!」
なにしてんのかえして、と手を伸ばしてケータイを奪い返そうとするが、しなやかにかわされて、元の身長差と相まって中々取れない。こんなところで音駒クオリティのしなやかさを出さんでいい!
「いやぁね?Aから話は聞いていたんですけどもー、なんでもおたくAとお付き合いしちゃってるらしいって聞いてー、昔から面倒見たり風呂入れたり色んな世話焼いてるボク的には心底心配っていうかー」
「今風呂強調したなー」
修羅場かー?やれやれ!とノリノリな烏野の副主将さん、ひきつった笑いを浮かべる夜久さん。いや同じ3年生の皆さん助けてくれませんかね!?
「だからァ……もし泣かせたりしたら取るからそのつもりで」
一方的にそう言った後ピッ、と通話はきられ、ほいっと端末を返された。
最後だけ異様にてつろーの声が低くなってちょっと怖かったけど、私はそんなことどうでもよかった。怒るのも忘れてその場にしゃがみこんだ。
……や、やばい。治くんに、引かれたかもしれない。
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亜莉沙(プロフ) - すごい続きが気になる終わり方...! (2020年12月21日 15時) (レス) id: 363b9c8c34 (このIDを非表示/違反報告)
みやすなすー - 続き見たかったよぅっ…! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 22d4d41058 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず。(プロフ) - 子さんの書く夢主ちゃんと双子の掛け合いが可愛らしくて大好きです!更新楽しみにしています!お身体に気をつけてください! (2020年4月20日 3時) (レス) id: 6fdce1ba75 (このIDを非表示/違反報告)
なつみかん(プロフ) - 大好き過ぎて更新楽しみにしてます!笑 (2020年3月21日 0時) (レス) id: 0a5ad8d0ef (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 更新お疲れ様です!私も見る専です!笑 (2020年3月20日 16時) (レス) id: 94878ef260 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年3月15日 0時