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(なんで、こんなことに……)
私は、およそ自分の格好とは不釣り合いなジュエリーショップにて、とんでもない金額の貴金属やアクセサリーの展示の前に立っていた。私を連れてきたお兄さんは店員の人と顔見知りなようで、何やら向こうで話しているが、正直1人にしないで欲しい。こんな所に来たこともないし、そもそも彼の目的も分からないし、不安が積もるばかりだ。
何故、彼は誘拐と称して私を連れて来たのだろうか。もしかして、私を白鳥女学院に通っているお金持ちだと踏んで、高価なジュエリーを売り付ける気だろうか。それなら口車に乗せられる前に逃げないと……
「なんか気に入ったのあった?」
「あ……」
後ろから肩に手を置かれてびくりと体が跳ねる。ショーケース越しに映った彼が、艶っぽく微笑んでいるのが見えた。
「あ、あの、私こんな高価なもの買えませんので……」
「え、何言ってんの?オレのこと販売業者か詐欺師だと思ってる?」
「……違うんですか?」
「人聞き悪〜。オマエじゃなかったら殴ってた♡」
冗談なのか冗談じゃないのか分からないことを言って笑う彼。言葉足らずなのが悪いと思うのだけれど……
「だってお兄さん、まだ名前も教えてくれないから……」
「アレ?名乗ってなかったっけ」
「名乗られてません」
「灰谷蘭。ハイ、これでいいだろ?そんでどれが気になった?値段見なくていいから言ってみ」
あっさり名乗られたが、男の人で蘭という花の名前を付けられるのは珍しい気がする。蘭の花ってとっても綺麗なのよね。彼の瞳の色に似た紫色の蘭の花なんて、とっても鮮やかで美しい。
それにしても、その名前の淑やかな響きに似合わず強引な人だ。値段を見るなって言われても、0の数にばかり目がいってしまう。
「あの、私こんな高価なものは探してなくて……」
「んー?じゃあブランド変える?百貨店ぐらいの方が気楽か?」
「いえあの、ブランド物というか、なんて言ったらいいか……」
言葉を探して視線を彷徨わせる私を、灰谷さんは不思議そうな顔で見ている。
「雑貨店とかに置いてあるアクセサリーが、見てみたいんです」
「は?雑貨店?」
「はい。1000円くらいで買えるアクセサリーが、こう、沢山見られる場所に、行ってみたくて」
灰谷さんは少しの間、眉を寄せたまま固まっていた。そして少し考えるような素振りを見せた後、ケータイを開いて誰かに連絡をし始めた。
あれ?私そんなに変なこと言ったかな……
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名無 - 神すぎる。占ツクでここまで完成度の高い作品は久々に見ました。 (2022年2月13日 13時) (レス) @page25 id: 918f2226ec (このIDを非表示/違反報告)
桜妃(プロフ) - 作者様語彙力ありすぎでは…!?更新楽しみにしてます! (2021年9月6日 3時) (レス) id: 16f20e3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴ子(プロフ) - はじめまして…こんなに作品に引き込まれたのは初めてです;;主様のペースで更新楽しみにしております! (2021年8月26日 12時) (レス) id: de92cbd6b8 (このIDを非表示/違反報告)
しいい - すごく好きです!続き楽しみにしてます!! (2021年8月26日 1時) (レス) id: 69df95b685 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大っ好きです!蘭ちゃん…可愛すぎる…更新楽しみにしてます\(//∇//)\応援してます! (2021年8月25日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2021年6月30日 23時