第九十七の怪 ページ1
『普くんになら、って……普くんがいるだけで安心できて、
普くんと過ごして……
……はじめて、心の底から救われた気がしたんだ』
「……」
嬉しそうに花子くんの方をちらりと見たAちゃん
『……でも、
家に帰ったわたしに、両親は衝撃的なことを言った
「子供ができた」……』
「「!?」」
「……」
息を吐いて、またゆっくりと話を切り出す
『……男の子だったんだ、その子は
「お前なんてもう要らない」
そう、言われて
……
今までの血の滲むような努力は何だったのか
わたしの存在意義を一瞬で……
躊躇もなく一蹴りした両親に
……はじめて殺意というものを覚えた
"殺してやる"
……そう思って、
花の手入れで使っていた花鋏を両親に向けたんだ』
「え……!?」
「ま、まさか……」
まさか……Aちゃん、両親を
それを見かねたように苦笑を浮かべたAちゃん
『……殺してないよ』
「「え……?」」
「……」
『……本当は呪いたいほど嫌いだし、
今、思い出しても……殺意が湧いてくる
でも花鋏を向けたとき
怯えて部屋の隅で固まっている両親を見て
わたしは今までこんな弱々しい人達に
暴力をふるわれてきたのかって実感してね
こんな奴らにわざわざ自分の手を汚す
価値なんてないんじゃないのかって
そう思って……』
目を伏せて考えるような仕草をする
でも殺してやる……と
そう言ったときのAちゃんの顔は……
躊躇なく簡単に人なんて殺せそうな……
素朴な、でも何処か冷めた顔だった
「「Aちゃん/Aさん」」
『家にはもう二度と帰らないって決意して
そのまま家を飛び出したんだけど
……かといって、
わたしたったひとりで生きていけるはずなくて
普くんは優しいから……
俺が何とかするって言ってくれたよね
……でも』
「……」
花子くんはAちゃんを泣きそうな顔で見つめる
目を伏せて帽子のつばを下げながら俯いた
「「「……」」」
『……これ以上生きていたいとは思えなかった
普くんにそう伝えて
わたしは
……この植物園から飛び降りたんだ』
「「「………」」」
息が詰まりそうになった
静かに目を閉じそう言ったAちゃん
私達は何も言うことが出来ずに
しばらくの間無言でAちゃんを見つめていた
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ひより - 更新待ってます!!! (3月17日 9時) (レス) @page46 id: 07c25e379c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - このシリーズ大好きです。いつでも更新まってます! (2023年2月28日 16時) (レス) id: 707eeda184 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - もう更新は無いのですか?いつでも待ってます!! (2022年12月24日 18時) (レス) id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
ヒカリ - 続きがすごく気になります!!更新頑張ってください!!! (2022年12月3日 8時) (レス) @page46 id: bbb8acb98d (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん - 続き読みたい (2022年7月8日 22時) (レス) @page42 id: 2b16648ba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空白 | 作成日時:2020年4月18日 5時