美形総書記の活動記録 (ページ10)

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記録九ページ10

単刀直入に言おう
最初こそ酔っていたものの、夜道を歩く間とうに酔いなんて覚めていた

あいつと煉獄が来るまでの間、麗の鈍感さは重症であるという議題だった。
宇髄や胡蝶もあれには手を焼いているらしく、ああだこうだと話し込むうちにあっという間に酒が進んだ

2人が着いてすぐ、本能のままに隣へ座らせた。
はっきりしない頭の中で麗の透き通った声が反響する
あまり記憶には残っていないが、酒を注いだことと気になっていたことを口から滑らせたのはうっすらと覚えている

その後解散し、肩を借りながらよたよたと歩き出す際にちらりと見えた黄色い眼差しには知らぬ振りをした。
迎えを譲ったんだ、これぐらいは赦されて当然だろう

「お～い不死川、もうすぐ着くぞ、寝るな」

ああ、もう着いてしまうのか
大方酔いは覚めていたが、夜風の心地よさと度々声をかけてくれる麗の声が耳に馴染んできたところだったのに。

屋敷に入ると隠に迎えられ、そのまま"あとは頼む"と帰ろうとした。
ちらりと隠に目を合わせ、合図するかのように麗の腕を掴んだ

あいつは酷く驚いていたが、先刻ので気を利かせた隠に押され屋敷へと上がり込ませた。
そのままぼうっとしていると、未だ酔っていると信じ切っている麗は水を飲ませてくれた

ああ、なんて役得なんだ。頭を使って良かった。心の底から自分の計算高さを褒め称えたい。
飲み干すために頭を上げると、酒のせいでほんのり顔が赤らんだそいつがいた

いつもより潤んでいる目元にしっとりした唇
俺を運んでくる時にかいたであろう汗がじんわりと額に滲んでいる

目に毒だ

誤魔化すように、手を伸ばして汗ばんだ髪を耳に掛けてやる
その時の驚いた顔がやけに可愛く見えて
もうどうにでもなれ、とそのまま抱きつくように倒れ込んだ

羽織が擦れ、こいつの象徴のような金木犀の香りに満たされる

頭上で何か言われているが、そんな些細なことは全く気にならなかった。それ以上に、今この時、この男の体温を感じられることのほうが余程大切だった

あわよくば、香が移れば良いのに。と願いながら明日の自分に全てを託し、重くなった目蓋を閉じた