unknown...【ST】

車 : Juri ページ3

「ママ、今日出かけるとこって？」


ママが運転する車に揺られていると北斗が肩に頭を乗せてきた。


「ママあ、北斗寝た。じゅっくんも寝ていい？」


「質問の答え、聞かなくていいの？」


「んとね、聞いたら寝る！」


元気に返事するとママは苦笑する。


「今日は樹と北斗の新しい家族のところに行くの。」


「新しい家族？」


「そうよ。ふたりのパパになりたいって人がいてね、その人に会いに行くの。」


「初めて聞いた･･･」


驚いた声を上げるとママは含み笑いをした。


「言ってなかったからね。今日会ってみて、パパになって欲しいか2人に決めて欲しいの。」


「おうちとバイバイするの？」


「ふたりが良いって思ったらね。」


「蓮は？美咲は？一緒？」


「ううん、蓮は別の人と住むことになったの。美咲はまだおうちにいるよ。」


「2人と離れ離れ･･･なの？」


事実を声に出して確認すると途端に不安に襲われる。


「やだあ、ママとバイバイしたくない･･･」


我慢しようとしたのに涙がポロポロ出てくる。


「樹、泣いたらダメでしょ。」


いつの間にか北斗が目を覚ましていた。


「おうちといつかバイバイするって日が来てもおかしくないもん。北斗はパパに会ってみたい！」


「北斗は強い子ね。」


車はゆっくり速度を落として停車した。


「さあ、着いた。今日はここでお話してみよっか。」


ママは車を降りてから北斗を先に抱っこした。


「ママ･･･」


「樹、1回会ってみよう？優しいパパかもしれないよ。」


「わかった。」


「よし、良い子。」


ママはそう言って俺を抱っこする。


地面にそっと下ろされてから、行こうと促される。


「北斗。」


「どうしたの？」


「手、繋いで。」


「わかった。」


そのまま北斗と手を繋いで自動ドアをくぐった。

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