灰谷兄弟の恋愛事情 (ページ19)

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19話ページ19

花火大会といったら、ゆかたで行くのが正解なのだろうか。だが、私は浴衣など持っていない。胸が引き締まり、背筋がぴんとしてなんだが落ち着かないのが少し苦手だからだ。
しょうがないので、普通に私服で行くことにした。
夏なので外は猛暑だ。玄関から出た途端、ものすごい暑さが私を襲う。
2人に待たせちゃって申し訳ないな。

「遅くなりましたー」

「おせーよ。どれだけ待ったと思ってんの？」
「まぁ、蘭ちゃん今日機嫌いいから許してあげる〜」

神様ありがとう。今、蘭の機嫌が最悪だったら、私は殺されていたのかもしれないと思うと、冷や汗が止まらなかった。

「2人の家ってどこー？」

蘭のバイクの後ろに乗り、聞く。

「ん〜？あー、もう少ししたら着くよ〜」

見渡すと、どんどん背の高い建物ばかりのビル街に来ていた。
2人の家に行くの、初めてだなー。

「はい。着いたよー」

目の前に現れたのは、いかにもお金持ちの住んでいるタワーマンションだった。
やっぱ、2人ってすごいんだな。
改めて実感した。

エレベーターに乗ると、竜胆が押してくれた。
一瞬だったので目を疑ったが、押されたのは、最上階だった。

「え、もしかして最上階の1部屋なんですか？」

驚きのあまり、思わず敬語になってしまう。

「え？この階は、全部俺らの家だけど？」

当たり前だろ？みたいな顔して言わないで。
今までもだけど、今回でより格の違いを感じた。

「お、お邪魔します」

「どうぞ〜」

私の部屋ぐらいあるのではないかと思う玄関を抜け、長い廊下を抜ける。

1面ガラス張りの体育館ぐらいあるのでは？と錯覚するほどのリビングが現れた。

「ﾋｯｯｯ」

「何する〜？てか、A浴衣じゃないの？楽しみにしてたんだけどー」

やっぱり、浴衣で来るのが正解だったのかな。
申し訳ないけどないものは無い。

「じゃあ、今から取寄せる？まだ時間あるし間に合うだろ」

「竜胆よろしく〜！あっ、俺らも着ちゃう？」

「了解、じゃあ3人分取寄せる」

そう言って、ピザのデリバリーみたいな感覚で竜胆はどうやら浴衣を取寄せるらしい。
電話をしに行ってる間、蘭は私の適当に1つ結びした髪を解き始めた。
全く意味がわからない行動に、だんだん怖くなってくる。助けて竜胆、早く帰ってきて。

「お待たせ。すぐ来るって。」

「竜胆〜、髪型変えて遊ぼー」

竜胆は名案とでも思った表情をして、らんと同じように私の髪をいじり始めた。