ちゃーみんぐ・わん【はじめしゃちょーの畑】 (ページ6)

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「たなっち～きて～」

「ちょっと待ってください」

俺は今猛烈に迷っている。

右手に取ったてんかすと天つゆの悪魔のようなおにぎりか、左手に取った新商品の焼肉おにぎり。

……決めた。悪魔おにぎりにしよう。これずっと食ってみたかったんだよな。

左手に取った焼肉おにぎりを棚に戻そうと手を伸ばすと、白い腕がすっと伸びて俺が今から戻そうと思っていた焼肉おにぎりをひとつ取り、俺の方を見る。

数秒、バッチリ目が合って確信する。うそだろ。

「……え、」

白い肌に黒い髪、そしてなにより間違いなくあの人であろう見覚えのある顔。

「…え？龍昇くん？」

そう言って、見覚えのある顔はただでさえ大きな瞳をさらに見開いた。

「龍昇くんだよね？髪色変わってて全然気付かなかった。私だよ、覚えてる？」

「覚えてる…え、めっちゃ久しぶり…」

「よかった！久しぶり！」

覚えてるに決まってる。そういえば静岡に引っ越したって、昨日聞いたばかりだ。

話を聞いた時はまぁ、今更何も無いだろうと思って軽く流したけど、あれフラグだったのかよ。

てかここに居るってことは、もしかしてワンチャン家近い？

「下向いてて全然気付かなかった、久しぶり。最近全然連絡してなくてごめん。あ、髪切った？」

「いいよ全然！そう、切ったの。よく気付いたね。前に会ったのだいぶ前なのに」

そう言って短くなった自分の黒髪を撫でる。

「て言うか、なんで静岡…？」

自然と口に出てしまった質問。本当は知っているけど、まぁ不思議がってなきゃ不自然だし。

「仕事やめちゃって、実家が静岡なの。でも、実家には戻れなくて結局この辺に家借りてるんだけどね！」

えへへ、と笑う顔を見て、いつのまにか忘れてしまっていた彼女との記憶が、なんとなくだが頭の中でぐるぐる回る。

……本当に会っちゃったよ