うそつきとキス 2

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「なぁ、めめ」

康二がいつになく真剣な声で俺の名前を呼ぶ。
なんだよ、と顔を上げると真っ直ぐにこちらを見つめる康二の顔があった。




「めめはその人にどーなって欲しいん？自分の手で幸せにしたいんか、それとも自分とは違う人の手でもいいからとにかくその人に幸せになってもらいたいんか」



康二のその言葉に必死に堰き止めていた思いがどんどんと溢れていく。



Aさんの優しく俺を呼ぶ声が好きで。
けたけたと子どものように笑う声が好きで。
年上なのに時々子どもみたいな表情を見せる瞬間がたまらなく好きで。


次から次へとAさんを思う気持ちが溢れて、堰き止めていた壁をぶち壊していく。









「・・・俺の手で幸せにしたいに決まってんじゃん・・・」







好きな人の幸せを手放しに喜べるほど俺はまだ大人ではない。
Aさんが笑うその隣は、翔太くんじゃなくて俺がいい。






「それならもうやることはひとつしかないやんか」

康二の言葉に「え」とあまりに間抜けな声をあげた。
目が合うと「そんなん奪うしかないやろ」と康二は恰好つけてそうニッと笑った。

なんで、康二のほうが泣きそうなんだよ、とぎこちない笑顔に思う。




「ばか」





俺は上手く笑えていただろうか。
人の気も知らないで好き勝手言いやがって。
心の中でそっとそう悪態をつく。



でも、そんな康二の言葉に少し心が軽くなった気もした。
厄介な相手に知られてしまったと思ったが、知られたのが康二でよかったのかもしれない。







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