取られちゃうよ？ ページ41
.
あの日以来、隙を見ては通っていたAちゃんのコンビニからなんとなく足が遠ざかっていた。
はぁあ…、
口を開ければ出てくるのはため息ばかり。
あの日のAちゃんと目黒が話している姿が頭に浮かんでは消えて行く。
そのたびに、俺の中でドス黒い感情ばかりが浮かび上がる。
俺とAちゃんは付き合ってるわけでもなんでもない。まして友達でもない。
その関係はただのコンビニの店員と客。
俺の片思いだとは言え、その相手に「なんで目黒となんか」なんて嫉妬心を抱く資格なんて俺にはないはずなのに。
こんなに嫉妬して、誰にも奪われたくないって思ってるのなら、今すぐこの想いをAちゃんに告げればいいのかもしれない。
でも、それが出来ない弱い自分がいた。
想いを告げてしまえば今のこの関係性が崩れてしまう。
それで上手く行けばいいが、もしダメだったときのダメージを考えたらなかなか踏み切れない俺がいた。
それくらいに俺の中でAちゃんの存在は、日々の生活の中で欠かせないものになっていた。
だからこそ、目黒への嫉妬心や自分のなかの下らない独占欲で、焦ってその関係性を壊してしまうわけにはいかない。
「照〜、グスグスしてると取られちゃうよ〜？」
後ろからヒョコッと顔を出した佐久間が声をあげる。
え？俺、気付かないうちに今、口に出てた？
佐久間の声にビクッと体を震わせると、「照、びっくりしすぎ」とそれを見て笑い声があがる。
「照、差し入れのドーナツ、早くしないと全部あいつらに取られちゃうよ？」
ほら、とドーナツに群がるラウールや翔太の背中を指差す。
ラウールが俺と佐久間に気付くと「照くーん！早く！ドーナツあるよー！」とこちらに手を振った。
満面の笑みを浮かべるラウールの姿に先ほどまで渦巻いていた黒い感情が少し晴れた気がした。
はいはい、ゆっくり重たい腰をあげ、俺は佐久間の腕を掴み、「行くぞ、」と小さく笑った。
その後ろで、カバンの中のスマホが小さく震えていたことに俺は気付くことはなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1015人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さーや(プロフ) - ひとみさん» コメありがとうございます。私も岩本くんがんばれー！と思いながら書いてます。笑 また更新しますので、読んでいただけると嬉しいです〜 (2020年3月16日 21時) (
レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ(プロフ) - 冷たい態度を取られている、岩本君に「頑張れ！！」と応援してしまいます^ ^お話も面白くて、情景が浮かんで、読んでますよ〜 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 795ac4ea66 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さーや
| 作成日時：2020年3月15日 11時
