ただの店員、ただの客 ページ20
Raul side
網の上で焼かれるお肉たちがジュージューと音を立てると、それに比例するように僕のお腹もグゥゥと音を上げる。
賑やかな店内でもその音は照くんの耳に届いたようで、「ラウいっぱい食べなね」と笑われた。
焼かれていくお肉を男4人でがっつく。
食べようと思って箸を伸ばすと、寸でのところで奪われた。
「あ！めめ、僕が食べようと思ってたのに！」
「なに言ってんの、俺の肉だよ、これ」
パクッ、とめめの口の中にお肉が消えていく。
あぁ僕のお肉…なんて思っていると、横から照くんが「まだいっぱいあるんだから喧嘩すんなって」と焼きあがったお肉をお皿に乗せてくれる。
本当、照くんは優しいなぁ、なんて思いながら、お肉を頬張る。
「そーいえば、岩本くん、あの店員さんとどういう関係なんですか？」
お肉を口に運びながら、向かい側に座るめめがそう声をあげる。
あまりにドストレートに聞くものだから、思わずむせ込む。
「どういう関係もなにも、ただの店員と客だよ」
未だにむせ込む僕の背中を照くんは優しくさすりながら、そう言った。
最初に照くんとあのコンビニに行ったとき、ただの店員さんとお客さんよりもっと他の何かがあるように感じたのにな。
わざわざただの店員さんを探して、チョコをあげたりするものかな。
そんなことを思いながら、僕の背中を優しく撫でる照くんの手の温もりを感じる。
「でもさっきなんか渡してたやんか」
「そうそう、何も買わずに話してたし」
「…お前ら、ずっと見てたんだな、」
めめと康二くんが先ほど盗み見た光景の話をすると、照くんは困ったように笑った。
「ただの店員と客なのは本当」
その言葉のあとで、照くんは小さく息を吐き出す。
「んで、俺があの店員に片思い中。まぁ全然相手にはされてないけど」
これで満足？と照くんはめめと康二くんに視線を向ける。
「え！まじで？」
「照にぃ相手にしないってすごない？その子」
「うっそ、」
照くんの言葉に僕ら3人がそれぞれ言葉を発すると、「俺が片思いしててわりぃかよ」と照くんは苦笑いを浮かべた。
別に悪くないんだけど。
悪くないんだけど。
全然相手にされていない片思いの子の話をするわりに照くんの表情はどこか嬉しそうで、なんだか不思議な感じがした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1015人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さーや(プロフ) - ひとみさん» コメありがとうございます。私も岩本くんがんばれー！と思いながら書いてます。笑 また更新しますので、読んでいただけると嬉しいです〜 (2020年3月16日 21時) (
レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ(プロフ) - 冷たい態度を取られている、岩本君に「頑張れ！！」と応援してしまいます^ ^お話も面白くて、情景が浮かんで、読んでますよ〜 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 795ac4ea66 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さーや
| 作成日時：2020年3月15日 11時
