13 ページ13
.
「俺にしとけば？」
弱っている相手に付け入るなんて、最低なことだと分かっていながら、いつの間にかそんな言葉が口から零れ落ちた。
Aは驚いた表情でこちらを見つめる。
赤くなったその目がまた小さく揺れた。
うん、とも、いや、とも言わないAに俺はしびれを切らし、無理矢理手を引っ張って店を出る。
外はいつの間にか小雨が降っていた。
小雨が降りしきる中、何も言わずにAの手を引き、人の海を掻き分け進む。
Aの手を握ったのはいつぶりだろうか。
記憶の最後にあった手より、Aの手は折れそうなほどに細く女性らしいものになっていた。
互いに成長しているのは、幼馴染としてその成長を一番近くで見ていたから分かっているはずなのに、触れ合うことのなかったその肌がやけにリアルで心の奥を疼かせた。
ホテルに着き、シャワーも浴びぬままにAを抱いた。
こんな風に体の関係になりたかったわけではないのに、と俺の下で快楽に顔を歪めるAの姿を見ながらそう思う。
だけれど、今の俺にはこうすることでしかAとの関係を深くする方法が思いつかなかった。
「ガキだな、俺・・・」
行為を終え、小さな寝息を立てるAの顔を横目で眺めながらポツリ、と呟く。
素直にこの恋心を告げればいいのに、と自分でも痛いほどに分かっているのに、傷つくのが怖くて踏み出せずにいる。
傷つかないために、自分を守るために、俺はAと体を重ねることを選んだ。
これでいい、これでいいんだ、と自分に何度も言い聞かせる。
この体を重ねる瞬間だけは、Aは俺のことを見つめ思ってくれている。
それで十分だ、と。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1503人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さーや(プロフ) - strawberrykiwiさん» 読んでいただきありがとうございました！舘様はほんと不憫な役回りになってしまいました…クズの中にも救いがあればいいな、と書いたお話なので感想いただけてとても嬉しいです。 (2020年5月13日 13時) (
レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
strawberrykiwi(プロフ) - 切ないだけでは言い切れないお話でした。何と表現したらいいか。涼太君には悪いけど、2人には良かったね、と頭を撫でたい気持ちになりました。丁寧に綴られたお話をありがとうございました。 (2020年5月13日 5時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - ほちさん» 読んでいただきありがとうございます！クズなしょぴに少しでも救いを…と思いながら書きました。笑 また機会があったら読んでくださいね。 (2020年3月12日 10時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
ほち - 本当に良かったです！切なすぎて泣いてしまったくらいです。素敵なお話ありがとうございました！次回も楽しみにしてます！！ (2020年3月12日 1時) (レス) id: e418232ef2 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - 野良(のら)さん» 私の書くしょぴ、いつもどことなくクズ感溢れてるけど大丈夫です・・・？笑 でも好きだって言ってもらえてうれしいです！またどんどんお話書くのでもしよければ読んでくださいね〜！ (2020年3月9日 13時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さーや
| 作成日時：2020年2月23日 22時
