隣人にご注意を。

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「あ、Aさん誕生日いつ？」
そうだ、と何か企んだような表情を浮かべる目黒くん。

「私？」
〇月〇日だけど、と言うと自分で聞いたわりに興味なさそうに「ふーん」とだけ言う目黒くん。
別にそこからどうのこうのを期待してるわけじゃないけれど、自分で聞いておいてその反応はなんかこっちに無駄に罪悪感が芽生えるんですが・・・



「なんか欲しいものとかあんの？」

「んー・・・これといって浮かばない」
大抵のものは自分で買えちゃうしねぇ、と続ければ目黒くんが何も言わないけれど憐れみの目をこちらへ向ける。
別に悲しくなんてないけれど、そんな目で見られるとなんだか急に自分が寂しい人間のように思えてくるからやめていただきたい。



「あ、」

「ん？」

「花とかもらったら嬉しいかも、ベタだけど」

「嬉しいもんなの、それ？」

「もらったことないから知らないけど嬉しいんじゃない？」

「ないのかよ」

そんなやり取りをしていると互いに段々と面白くなってきて、最後には語尾が笑い声に変わっていく。





一通り二人でふざけ倒したあとで、目黒くんが「タバコありがとね」と改めて言う。

「これで買収成功だね」

「プレゼントじゃねぇのかよ、」
プッ、と吹き出す目黒くんにつられて私もまた笑う。

「あんまり吸い過ぎると体に悪いよ」

「カートンでプレゼントしてきた人に言われる筋合いないけど」

「うっさい、」


何回かそんなやり取りをしたあと、じゃぁね、とドアを閉める。


目黒くん喜んでくれてよかったな、渡してよかった、と心の中がじわじわと温かくなっていく気がした。
人の誕生日を祝うのも久しぶりだったけれど、やっぱりいいものだな、なんて思いながら私は部屋の中へと戻った。




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