ウワサの ページ19
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スマホがピコン、と鳴った。
通知を見れば、支払い期限が今日までだと知らせる内容のメッセージ。
うっわ、忘れてた。慌てて準備をして、部屋を飛び出す。
「うわ、」
勢いよくドアを開けると、すぐ近くから声が聞こえる。
咄嗟にそちらに目をやれば目黒くんが立っていた。
「ごめん、ぶつからなかった?」
「ん、大丈夫」
ちょうど帰ってきたところの目黒くんと鉢合わせ。私がドアを開けようとしたタイミングがもう少し遅ければ確実に直撃していた。
「ウワサのお隣さん?
」
目黒くん以外の声が聞こえたかと思うと、目黒くんの後ろからひょこ、っと茶髪のこれまた長身の男の子が顔を出す。
「そそ、ウワサの」
「ウワサのお隣さんって、目黒くん、外で何言ってるの?」
ウワサの、というワードがやけに引っ掛かる。なんかどうせろくでもないこと言われてるんだろうなぁ、酒飲み女とか。
「別に変なこと言ってないから」
私の心を読んだのか、目黒くんは喉の奥でくっく、と笑い声をあげる。
そして安心して、と頭にポン、と手を置いた。
「あ、Aさん」
「ん?」
頭に置かれた目黒くんの手を振り落としながら、返事をすると「これ、この前の向井康二」と後ろに立つ茶髪の男の子を指さす。
向井康二。
それは先日、目黒くんが「本当は俺向井康二って名前なんだ」と嘘をついた曰くの名前。
そういえば、検索したときに出てきた写真の人物によく似ている。
「あ!ウワサの!」
私が思わず声を上げると、茶髪くんもとい向井さんが「なんやねんウワサのって」と目黒くんに詰め寄る。
「べつになんでもねぇーよ」
「なんか変なこと言ったんちゃうやろな?」
2人で何やらぎゃーぎゃーと騒ぎ始めたので、私はしれっと2人の横を通り過ぎ、階段を下りた。
「あ、Aさん、どこ行くの?」
私に気づいた目黒くんが声をあげる。
「コンビニだけど」
「じゃぁタバコ買ってきて!」
空になっちゃった、とタバコの空箱が投げられてくる。
「やですけど」
「お隣さんのよしみで」
「こういうときだけお隣さん都合よく使うのやめてよ」
そう言いながらも私はちゃっかりタバコの空箱を握りしめているわけだけど。
お願いねー、と笑う目黒くんに背中を押され、私は階段を下りる足を再び進める。
なんの変哲もないただの空箱のはずなのに、なぜかその空箱がたまらなく愛おしく感じた。
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さーや(プロフ) - mikantoamechanさん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます!付き合ってからのお話書きたいですね〜付き合ってからも振り回したいし振り回されたい!笑 (2020年3月5日 10時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - xxpanxxさん» ありがとうございますー!イベント毎のお話いいですね、書きたい! (2020年3月5日 10時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - くりさん» いつも書き方迷ってしまうのでそう言っていただけて嬉しいです。続きますかね?のんびり書きましょうかね。 (2020年3月5日 10時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
mikantoamechan(プロフ) - めっちゃ面白かったです!素敵な物語本当ありがとうございました!更新がいつも楽しみでした!非常に厚かましいですが、付き合ってからの続編(できれば長編)を希望します!! (2020年3月5日 3時) (レス) id: a1d9c0f6b4 (このIDを非表示/違反報告)
xxpanxx(プロフ) - 凄いおもしろくてきゅんとしてました!イベント毎の続きのお話あれば嬉しいです! (2020年3月5日 2時) (レス) id: d7347442ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さーや | 作成日時:2020年2月18日 15時