うそつきとキス

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「はい」

「もしもし、めめくん？」
不貞腐れて画面も見ずに着信を取ったせいで、思いがけない人の声に心がどきん、と跳ねた。


「今、話して大丈夫？」

「ん、今一人だから」

「よかった。翔太が隣にいたらどうしようかと思った」

「そんな状況で電話出ると思う？」

電話越しに笑うAさんに、なんだよ、と小さく笑い返す。

「今、めめくん絶対不貞腐れてるだろうから、その状況でも出そうだなって思って」



あぁこの人にはすべてお見通しなのだ。
きっと俺が今日、Aさんと翔太くんが会うことに対して抱いている気持ちも、今どんな表情をしているのかもすべて。





「ねぇ、めめくん」

「んー」

「明日、家来ない？」

「それ今日彼氏と会う人の発言？」
んふふ、と喉の奥で笑う。


「それとこれとは別。で、どうする？」

「わかってるくせに」
んふふ、と今度はAさんが笑う。



「明日の予定確認したら連絡する」

「待ってるね」

「今日楽しんでね。彼氏、めっちゃ楽しみにしてたよ」

そう言うと「厭味ったらしー」とAさんは大きく笑い声をあげた。
その言葉は嫌味半分、あとは明日会えることになった俺の勝者の余裕。



じゃあ、と電話を切る。





さっきまで楽屋に戻るのがあんなに億劫だったのに、すっかりその足取りは軽くなってなんならこのまま駆け出してしまいそうなほどだ。





そろそろ楽屋、というところで楽屋から出てきたメンバーに出会う。


「お、めめちょーどよかった。撮影再開だって」

「はーい」



ふふん、と翔太くんを横目に笑うと、翔太くんは曖昧な笑みをこちらに返した。







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