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A side
「Aっ！」
アパートの前。重い脚を階段に掛けようとしたその瞬間、愛おしい人が私の名前を呼ぶ。
振り返れば、そこにはぐちゃぐちゃに乱れた金髪。
「だい、すけ、」
ハァハァって肩で大きく息をする大介。
それに連動するようにぴょこぴょこと乱れた毛先が夜の空気の中で揺れる。
「ごめん、阿部ちゃんから全部、聞いたっ、」
「俺の、せいでっ、Aに怖い思いさせて、・・・ごめんっ、」
そう言うと大介は大きく頭を下げる。
阿部くんがどういう風にあのことを伝えたのかは分からないが、その事実に大介が大きな衝撃を受け
自分を責めていることは容易く想像できた。
「違う、違うの、」
大介のせいじゃないよ、ってそう言いたいのに、言葉を上手く紡ぐことが出来なくて。
ただ子どもみたいに違うって、そんな言葉ばかりを繰り返す。
「そんなの全然知らないで、勝手に勘違いして、酷いこと言って、サイテーだわ、俺」
違うよ、大介が悪いわけじゃない。
悪いのは全部私なのに。そんな風に自分を責めたりしないで、
「ねぇ、A？」
大介に名前を呼ばれるだけで、なぜこんなにも胸が高鳴るのだろう。
「別れるってあの言葉、撤回できないかな、？」
真っ直ぐで、でもどこか不安そうな大介の視線が私の視線と絡まる。
「撤回も何も、私はあれを受け入れてなんかないよ・・・」
大介のバカ、
そんな言葉は力強く抱きしめられた大介の腕の中に小さく反響してすぐに消えていった。
まだ少し乱れた大介の呼吸。
走るのが得意じゃないくせに、きっと必死に走ってきたんだろうってことが分かるその少しだけ早い鼓動が、私の胸を小さく締めつけた。
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さーや(プロフ) - すずさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！泣いただなんて嬉しすぎます…！ (2020年6月1日 16時) (
レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 泣いちゃいました；；とても素敵なお話でした；； (2020年6月1日 13時) (レス) id: f91208f58d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さーや
| 作成日時：2020年5月12日 16時
