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「佐久間、っ！」
やっと声が出たのは佐久間が階段を駆け下り終わったあと。
予想以上に大きな声が、夜の住宅街に響いて飲み込まれていった。
まずい、あいつ絶対勘違いしてる。
横を見ればAちゃんが今にも泣き出しそうな顔をしている。
好きな子にこんな表情させたくなんかないのに。
・・・なにしてんだろ、俺。
苦しくて悲鳴をあげる胸を掴みながら、佐久間が駆け下りて行ったその影を追うように俺も階段を駆け下りる。
途中足がもつれそうになったけど、必死に堪えてアスファルトを蹴る。
アクロバットは得意なくせに、運動は苦手ってわけがわかんない佐久間に追いつくのはそんなに難しいことじゃなかった。
走ったのとはまた違う別の胸の苦しさに耐えるように拳を握る。
「佐久間、っ」
目の前を走る佐久間の肩を思い切り掴む。
佐久間はそれを振り払おうとするけれど、走った疲れからかうまく力が入らないのかその動作は弱々しい。
「佐久間、話、聞いて」
「話ってなに？都合のいい言い訳かなんか？」
互いの乱れた息の中が街灯に照らされた夜の中で響く。
街灯に薄く照らされた光の中で向けられた佐久間の鋭い視線が体に突き刺さる。
「ちがっ、そうじゃ、」
「それともなに？ノロケ話でも聞けばいいわけ？」
「佐久間っ、」
「聞きたくないよ、そんなの」
佐久間はそう言うと、肩を掴んでいた俺の手を勢いよく振り落とした。
微かな痛みが手のひらに残る。
虚しく宙を舞った俺の手は、何も掴めないまま痛みだけを抱えて落ちていく。
佐久間は、また勢いよく走り出す。
俺はもうそれを追いかける気にもなれなくて、暗闇に徐々に飲み込まれていく佐久間の背中を見つめることしか出来なかった。
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さーや(プロフ) - すずさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！泣いただなんて嬉しすぎます…！ (2020年6月1日 16時) (
レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 泣いちゃいました；；とても素敵なお話でした；； (2020年6月1日 13時) (レス) id: f91208f58d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さーや
| 作成日時：2020年5月12日 16時
