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「…ってちょっと調子乗りすぎだわ、俺。そろそろ帰ります、同僚さんにも悪いし」
深澤さんはカバンを手に取ると玄関へと向かう。その背中を慌てて追う。
「深澤さん、」
靴を履く深澤さんの丸まった背中に声をかける。
なんで、まだここにいて欲しいとか思うんだろう。
なんで、もっと触れていたいだなんて思うんだろう。
でも、そんなの言えるほどの関係ではないのは分かってる。
ただ、少し前に偶然出会って、たまたま話すようになって。ひょんなことで家に来ただけ。
それ以上でもそれ以下でもなんでもない。
伸ばしかけた手を引っ込めたら、出かけていた言葉も喉の奥のほうに消えてしまった。
「Aさん？」
深澤さんが振り向いて私の顔を覗き込む。
「…またそんな顔すると、勘違いしちゃうでしょう？」
俺以外とすぐ調子乗っちゃうんだから、なんて笑う深澤さんの言葉に期待したくなる自分がいる。
「…深澤、さん？」
「はい？」
「連絡先、教えてください」
私の言葉に深澤さんは一瞬目をまんまるくして。そのあとで「連絡先、連絡先ね」って何な面白いのか分からないけど1人で呟いて笑い出す。
「QRコード出しますね」
深澤さんはそう言ってスマホの画面を操作し始めた。ゆるゆると画面の上を滑る深澤さんの指先を眺める。
「あれ？」
「どうしました？」
「…あんま連絡先交換とかしないからやり方分からなくなっちゃいました」
ほんとはいつもQRコード読み込む側なんです、俺。慣れないことするもんじゃないわ、なんて深澤さんは苦笑い。
「見せてもらっていいです？」
「ん、お願いします」
「ここですよ」
「あ、ほんとだ」
ありがとうございます、って顔を上げた深澤さんと目が合う。
その距離は今にも触れてしまいそうなほど近くて。
慌てて目を逸らすと、深澤さんの手が私の頬に伸びる。
「Aさん、？」
「はい、？」
「…キス、してもいいですか？」
はいともいいえとも言わぬ間に唇に触れた小さな熱。
その熱は優しく溶けて、すぐに消えていく。
「…ごめんなさい、まじで調子乗りすぎだわ、俺」
深澤さんはすぐに体を離し、目を逸らした。
少し長めの髪から覗く耳が赤く染まっている気がするのは、気のせいだろうか。
「すいません、じゃ」
深澤さんが出ていき、バタン、と乱雑に閉まったドアが大きな音を立てて閉まる。
ゆっくりと唇を指でなぞればまだそこに熱が残っていた。
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さーや(プロフ) - 優希さん» すみません💦教えていただきありがとうございます。修正しました。 (2021年10月30日 4時) (
レス) id: 4b2ff4c864 (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 28ページが原石のときのまま森本くんの名前が出てしまってます💦 (2021年10月29日 21時) (レス) @page28 id: 4434fac4a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さーや
| 作成日時：2021年10月26日 21時
