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「私、恋人がいたんです」
目の前の深澤さんは、真剣な顔をして私の話に頷いた。
つまらない話になりますよ、と思いながら私は話を続ける。
#
元彼・渡辺翔太とは友達の紹介、という名の謂わば合コンで知り合った。
あまりそういう場が好きじゃない私は、欠員の穴埋めで、どうしてもと頭を下げる友人の頼みに折れてその日その場に参加していた。
盛り上がる面々を横目に端っこでひっそりと1人、シャンディーガフに口を付けた。
「楽しんでんの」
隣にやってきた渡辺くんは、そう言って私の顔を覗き込んだ。
薄いのに整った顔をしている人だな、と思った。
「まぁ、」
「うそ、ぜってぇ早く帰りてぇって思ってんじゃん」
「…バレました？」
「Aちゃん？だっけ、こういうとこ苦手っしょ」
人数合わせで来たことを告げると渡辺くんは「やっぱりな、そんな感じのオーラ出しまくってるもん」なんてまた笑った。
そして渡辺くんは一瞬何かを考えたあとで、顔をぐい、と近づけた。
「苦手ならさ、このまま抜け出しちゃおうぜ、俺と2人で」
騒がしいはずの店内。
なのに耳元で囁かれた言葉はやけに大きくて、やけにはっきりと聞こえた。
「…え、」
「決まりな？」
向けられた笑顔に私はなぜか頷くことしかできなかった。
私が頷いたのを確認すると、渡辺くんは私の横を離れ合コンの集団に戻っていく。
ドキドキを隠すように飲み込んだシャンディーガフ。
喉で弾ける苦い泡が少しだけくすぐったかった。
#
適当な盛り上がりで迎えた合コンの終わり。
それぞれが連絡際を交換したあとで、誰かが「カラオケでも行かない？」なんて言い出した。
「ごめん、私、これで帰る」
「今日はありがとね」
私をこの会に招いた女の子と適当な会話を交わし、また誘ってね、なんて社交辞令にもほどがある言葉を言って手を振る。
「俺、今日はカラオケパス」
「はぁ？翔太が来なかったらつまんねーじゃん！」
「明日、早ぇの」
私の後ろで渡辺くんがそう言っているのが聞こえた。
なんとかして引き止めようとしている彼の友人の言葉を渡辺くんはのらりくらりと交わしている。
そんなやりとりを聞きながら、私は手を振り騒がしい集団からそっと離れた。
まだ明るいネオンが灯る街並みの中をゆっくりと吹き抜ける生ぬるい空気が体にじっとりと纏わりついて気持ち悪かった。
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さーや(プロフ) - 優希さん» すみません💦教えていただきありがとうございます。修正しました。 (2021年10月30日 4時) (
レス) id: 4b2ff4c864 (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 28ページが原石のときのまま森本くんの名前が出てしまってます💦 (2021年10月29日 21時) (レス) @page28 id: 4434fac4a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さーや
| 作成日時：2021年10月26日 21時
