クズは愛を知った ページ46
Aside
「いかな、いで、」
そう言えたのは、玄関のドアが大きな音を立てて閉まってから随分経ってからだった。
やっと吐き出せた言葉は、本当に聞いて欲しい人の耳には届くことなく、虚しく床に散らばっていく。
なんで言えなかったんだ、って後悔の波が押し寄せてくるけれど、そんなのはもう後の祭り。
自分のせいだって分かりきっているのに、溢れてくるのはなんで、どうして、って思いばかり。
「なんで」なんて。
「どうして」なんて。
わかってるくせに、それでも尚目を逸らそうとしている。
こうなった原因は、康二の優しさに甘えて、康二の気持ちなんて考えずにただ自分の精神安定を優先したバカでクズな私。
そんなの分かり切っているのに、私はまだそれを認めたくないと、首を横に振っている。
バカじゃん、
視界の端で、ついさっき康二からもらったピンクのチューリップが揺れる。
そのピンクが、私のことを嘲笑っているかのように見えて、無性に腹が立つ。
「…っ！」
こんなの、こんなの、こんな風になるならいらなかった、
貰ったときは胸がいっぱいになるくらい嬉しくて、愛おしかったはずのソレも、今はただただ私を苦しめるだけ。
視界から消したくて手で払いのけた花束は、バサリ、と鈍い音を立てて、床へと落ちていく。
リビングの床に落ちた鮮やかなピンクのチューリップは、私を恨めしそうに見ていた。
その横に転がるひとつの紙。
メモ帳を適当に切り取ったようなその紙をそっと拾い上げ、開く。
『ピンクのチューリップの花言葉って【愛の芽生え】なんやって。花屋の店員さんが教えてくれてんけど、なんや、よくない？
まぁそんなん知らんとただキレイやって思って買ったんだやけど(笑)』
康二のちょっとだけ、へろへろした字。
乱雑に切り取られたメモ紙の不恰好な切り口。
なぞると少しだけザラついて、私の心を乱暴に削っていく、そんな気がした。
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さーや(プロフ) - わたあめさん» お返事遅くなってしまいました。。そう言ってもらえると嬉しいです。ほんとただのクズの話なのに。笑 (2020年4月29日 16時) (
レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ(プロフ) - なんだか、ほんとクズなのに、さーやさんの書き方だと、そのクズさに嫌悪感は全く感じないんです。すんごい好き。クズ最高w (2020年4月25日 20時) (レス) id: cde53e16d5 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - 真白さん» 真白さんありがとうございます。多分、人って綺麗な部分より汚い部分のほうが多くて、それを互いに良いところで受け止めて分かり合っていくんだと思うんですよね。そういうのを書くのはなかなか難しい… 阿部ちゃんぜひ慰めてあげてください。笑 (2020年4月21日 14時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - クズな話であると同時に、純愛の話のようにも感じますね。どこか共感出来てしまうのは、綺麗なだけではいられない人間臭さを感じるからでしょうか。取り敢えず、可哀想な阿部ちゃんは、私が拾って慰めておきますね(笑 (2020年4月20日 21時) (レス) id: 76e9874d53 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - h413womanさん» ありがとうございます！そう言っていただけてすごくうれしいです。これからも更新していくので、もしよければ読んでくださいね！ (2020年4月18日 13時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さーや
| 作成日時：2020年4月13日 12時
