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気付いてしまった ページ19

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それから彼女と話したのは、多分当たり障りもないことばかりだけれど、でもそれでも話せるだけで心が満たされていくのが分かった。


「私、そろそろ行かなきゃ」


時計を見て彼女は席を立ちあがる。
スマホの時計を見れば、この店に来てから1時間ほど経っていた。


「俺もそろそろ行くんで、一緒に出ましょう」


自分のトレーと彼女の分のトレーを持ち、席を立つと「自分のものは自分でやりますよ」なんて彼女は申し訳なさそうに声をあげた。
ついでだから、とそれを遮ると彼女は「すみません」と小さく頭を下げた。

そんな何気ない一場面なはずなのに、それがやけに嬉しくて、でもどこか壁を感じてしまうのはなぜだろうか。









「これからお仕事ですか?」

店を出て駅へと向かうという彼女と一緒に歩きはじめ、なんとなくそんなことを聞くと彼女は少し顔を強張らせた。


「んまぁ、そんなところですかね」

少しぎこちなくそう答える彼女の様子が気になりはしたが、それ以上追及するのもな、と思いふーん、と軽く流す。



「これから大学?」

「そうですよ、次の授業は情報工学」

「でた、情報工学」

俺の言葉に彼女はわざとらしく顔を顰めたあとで大きく笑い声をあげた。









「じゃぁ、私こっちなので」

改札をくぐると、彼女は俺が乗るのとは反対側の電車のホームを指さす。
楽しかった時間はあっという間に過ぎていくといくのはなんでだろう、と彼女のそんな姿を見て思う。




「あの、」

「はい?」

「名前、教えてもらえませんか」



人混みの中に消えていきそうなその背中に声を掛け、次に会ったら聞こうと思っていたことを思い出す。




「俺は、阿部亮平っていいます。21歳、大学3年」

「私は、松村A。歳は26歳」



彼女、もといAさんはそう言うと「じゃぁ」と左手を挙げると、俺に向かって手を振る。





松村Aさん、か。
名前を知っただけなのに、なぜだか急に近づいた気がして心が躍る。





でも、次の瞬間にはその躍った心は急激に萎んで、枯れて行った。









だって、気付いてしまったから。





俺に向かって手を振るAさんの左手の薬指に光る指輪の存在に。






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ひどい顔→←子どものように笑う



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設定タグ:阿部亮平 , SnowMan   
作品ジャンル:恋愛
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さーや(プロフ) - 真白さん» 書いてる側としては、ふとした瞬間に思い出してもらえるのって本当に嬉しいことです。そんな風に思ってもらえるお話を書けているのであれば、本当に書いていても救われるというか。これからも少しでもそう思ってもらえるようなお話を書けたらいいな、と思います。 (2020年4月17日 16時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - 真白さん» あぁもう真白さんからのコメント嬉しすぎてなんて言っていいのやら…読みながらこんな素敵な言葉を私なんかがもらっていいのだろうか、と思ってしまいました。。本当にありがとうございます。 (2020年4月17日 16時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - さーやさんの表現って、じわじわと水のように、ゆっくりと、広く深く心に染み渡っていく感じがして、心地良いんですよね。読み終えた後も、ふとした時に思い出して、何度も反芻したりして。多分私、これから昼間の月を観たら、シールのこと思い出しちゃうなって。 (2020年4月15日 22時) (レス) id: 76e9874d53 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - この先こうなるんじゃないか、みたいなのは、読んでる時あまり考えてなくて(笑 毎回純粋に楽しんでます。ピュアだからこそ出来る恋の話だなと思うし、阿部ちゃんには恋愛下手であって欲しいという、私の願望は満たされました(笑 (2020年4月15日 21時) (レス) id: 76e9874d53 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - 真白さん» 多分、思っていたようなお話ではなかったかと思うのですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。相変わらず真白さんの素敵なコメントにキュンってしちゃいました!笑 ありがとうございます。 (2020年4月15日 16時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さーや | 作成日時:2020年4月5日 13時

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