9つ分の恋模様 〔 学生編 〕

・ ページ38

.

「うわー、最悪」

委員会が終わり、帰ろうと玄関へ向かうと、外は土砂降りの雨。

昼間は晴れていたし、なんだったら委員会の前まで綺麗に晴れていた。
なのに、なんでこんなタイミングで雨が降んねん、と嫌になる。

委員会なんか出ていたばっかりに、と別に委員会は悪くもないのに、八つ当たりすらしたくなる。





「あ、そーいえば」

そういえばこの前、置き傘したことを思い出し教室に戻る。
記憶は正しかったようでロッカーにはビニール傘が揺れていた。
これでとりあえずこの前の中、ずぶ濡れになって帰ることは回避できた。

よくやったあの日の俺、なんて、いつかの自分を褒めたたえると、傘を差し、土砂降りの中へと踏み出した。








バス停に着き、時刻表を確認するとバスが来るまであと10分ほどだった。
あと10分もこの雨の中におらんといかんのか。
激しく跳ね上がる水しぶきがどんどんとズボンの裾を濡らしていく。

あぁもう嫌やな、なんて思いながら待っていると、隣にピンク色の傘が揺れる。
傘で顔は見えないけれど、このバス停を使うということは同じ学校の子なのだろう。

互いの傘に雨粒が当たり、バラバラと音を立てていく。
そんな音に耳を傾けながらバスが来るのをただひたすらに待つ。







‥‥いや、全然来ぉへんやん。

どうなってんの？

スマホの時計を見れば予定時刻をもう10分も過ぎているというのに、バスは一向に来る気配を見せない。









「バス全然来ないですね」

隣のピンクの傘が揺れ、その中から声がする。




「もうとっくに過ぎてるんですけどね、時間」

「雨で遅れてるんですかね」

「そうなんすかねぇ…早よ来て欲しいわ」

「ほんと」




互いにそんな言葉を交わしながら、早くバスよ来い、と数分前と変わらぬ景色が広がる道路の先のほうを眺めた。





.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す