9つ分の恋模様 〔 学生編 〕

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「あぁ、やっと終わった…」



阿部の怒涛の勉強会も終わり、追試当日。

追試が始まる前までは落ち着かなくてどうしようもなかったけれど、阿部が「ちゃんとやったこと思い出せばいいんだから」と言ってくれた瞬間嘘みたいにすーっと心が落ち着いた。



配られた答案用紙。

並ぶ数字に一瞬うわっと思ったけれど、冷静に、落ち着いて、ひとつずつ、阿部に言われたことを思い出し、ゆっくりそれらに目を向ければ不思議とこれまで感じたような数字への嫌悪感は湧き上がって来なかった。





追試はそれなりに解けた、気がする。

結果はわかんないけれど、でも今まで数学では一度も感じたことのないような手ごたえがたしかにあった。
これでもうダメだったら、ほんとに私は数学とは折り合いが悪いのだと、諦めるしかない。




終わったことへの安堵感と数字に集中した疲労感がどっと身体にのしかかる。

重たい身体を引きずるように教室を出ると、廊下に阿部が立っていた。





「お疲れ」

なんだか難しそうな参考書を片手に持った阿部は私の姿を見つけるなり、よっと小さく手をあげる。
阿部の顔を見たら、なんだかほっとして、足の力が一気に抜ける。


その場にへなへな、としゃがみ込む私。
そんな私の姿に慌てて「え、ちょっと、え？なに？」と戸惑った声をあげる阿部。






「阿部〜…がんばったぁぁぁ」

まだ結果も分からないのに、終わった安心感に視界が滲む。



阿部はしゃがんで、私に視線を合わせると「A、よく頑張ってたもんな」と笑って頭を撫でた。

頭を撫でる阿部の手があまりに優しくて、涙がひとつ、またひとつ、と零れ落ちていく。
阿部はそんな私の涙を優しく親指で拭う。




「よしよし」

「あべぇぇ」

「そんな泣くなよ。まだ結果出てないのに」

阿部はそう言いながら、泣き続ける私の頭をそっと優しく撫でた。





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