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「A〜、お客さん」
1-7の教室の前。
入り口近くにいた女子に声をかけると、教室内に向かってその子がそう声をあげる。
「お客さん?」
そう言ってひょこ、とドアの隙間から顔を覗かせたのは可愛らしい女の子だった。
Aちゃんは俺の顔を見ると一瞬、顔を強張らせる。
まぁそりゃそうだよな。
俺、結構見た目いかついし、真顔だと怖いって言われるし。
まして、急に呼び出した相手がこんなんだったら余計ビビるよな、なんてそんな素直に反応をするAちゃんの心中を察して申し訳ない気持ちになる。
まぁちょっとだけ、そんな警戒しないでもいいじゃねぇか、なんて悲しい気持ちにはなったりするけど。
ほんのちょっとだけ。
「俺、3年の岩本照。岩本薫の兄」
自己紹介をすると、Aちゃんは「薫の!」と顔を綻ばせる。
そして「薫からいつもお兄さんのお話聞いてます」と笑った。
…この子、笑うと目がなくなるタイプの子だ。
笑顔を浮かべるAちゃんを目の前にそんなことを思う。
「あいつ、変なこと言ってない?」
「変なことは言ってないと思いますよ」
苦笑いを浮かべる俺に、ふふふ、とまたAちゃんは笑い声をあげる。その笑い声が妙に心地よく感じた。
「で、薫のお兄さんが何の用ですか?」
「あ、そうだ」
コレ、と今朝、薫から託されたノートを差し出す。
「これ薫が届けろって」
「あ、」
俺の手からノートを受け取ったAちゃんは「わざわざすみません」と頭を下げる。
別に謝ることはないのに。
どっちかっていうと薫がこの子に謝んなきゃいけないんじゃねぇかな?なんて思いながら、下げられた頭の旋毛をそっと眺めた。
「じゃぁ、これで」
「本当、すみませんわざわざ」
「いーよ、べつに」
後ろ手に手を振り、1年の教室を後にする。
ざわついた雰囲気はどの学年も一緒だが、響き渡る声が妙に若く感じて、2個下ってこんな感じだったっけ、ってなんだか不思議な感覚に陥った。
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さーや(プロフ) - 真白さん» 感想ってなかなか書くの大変ですよね。真白さんからのコメントいつも素敵な表現をされるなぁ〜と嬉しく読んでます!阿部ちゃんのお話、形が見えたら必ず出すので、気長に待っていただければ・・・! (2020年3月30日 17時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 自分でお話書けたらいいんですけど、何せ語彙力が無いもので…。他のお話とかも、いつも読んでて感想書こう!って思うんですけど、うまく言葉が出てこなくて(苦笑 さーやさんが温めてる阿部ちゃんのお話、いつか読めたら嬉しいです。いつも応援してます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: 3330f0b21b (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - 真白さん» 真白さんーーもうコメ見て嬉しくて嬉しくてどうしようって感じなのですが…!それぞれのメンバーの感じ上手く出せたらいいなと思ってたので嬉しいです。 自重なんてしなくていいのに…!阿部ちゃんのお話、実は今ちょっと考えてるものがあるのでいつか出せたらいいな (2020年3月29日 17時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 阿部ちゃんは、ぐいぐいアピールしたりはしないけど、ここぞという所でさらっと爆弾投げて来る感じが、イメージにハマってて、凄くときめきました。館様の、穏やかそうに見えて、ロマンチックだけど直接的な表現で気持ち伝えてくるところも、らしいなぁと。 (2020年3月29日 11時) (レス) id: 3330f0b21b (このIDを非表示/違反報告)
真白 - どのストーリーも、甘酸っぱくて、キュンキュンして、でもどこか懐かしいような…。いや、自分はこんな青春送ってないんですけど(笑 阿部担なので、ずっとさーやさんに書いて欲しくて、でもリクエストして困らせてしまったらと自重してたので、嬉しかったです。 (2020年3月29日 11時) (レス) id: 3330f0b21b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さーや | 作成日時:2020年3月28日 14時