9つ分の恋模様 〔 学生編 〕

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「あーもう席替えしたい、ここの席から早く離脱したい」

「なんでだよ、いいじゃんここ」

「めぐ、絶対それ思ってないじゃん」



窓際の一番後ろの席なんて、この教室の中で最高の場所を手にしているめぐに、教室の一番前の席の私の気持ちが分かるものか、と目の前に立つめぐを睨む。

一番前の席だけど、教室の出入り口の近くだからまだマシなほうかもしれないけど。
これが教卓のまん前だったら、もう早々に挫けていた気がする。

いや、でもこの席もめぐを呼び出す女子が来るたび、一番近くにいたという理由で「目黒くん呼んでもらえませんか」と高確率で声を掛けられるから全然よくない。

むしろそれが嫌すぎて困る。






「それかめぐの呼び出しがなくなれば、このままここの席でもいい」

「あ〜それは無理だわ」

「うっわ、なんか腹立つ」


今日もすでに2人の女子にお呼び出しされためぐ。
そして、その2回とも呼び出されていることを伝えた私。



毎日のように告白の呼び出しを受けているのに、呼び出しの回数は減ることがない。むしろなんか前より増えている気がしないでもない。







「めぐ、早く彼女作ればいいのに。そしたら呼び出しされることもなくなるじゃん」

「そうねぇ…」

めぐはそう言ったまま何か言いたげな表情をこちらに向ける。




「なに」

「いや別に何も」

「じゃぁ見ないで。腐る」

「は？他の女子なら大喜びだぞ」

「自意識過剰」

「自意識過剰じゃないの、事実」

「腹立つ」


机の下から足を伸ばしてめぐのスネを小さく蹴り上げると「お前ほんと最悪、」と顔を顰めるめぐ。

誰のせいでこんなに苛立っていると思ってるんだ、ともう一度めぐのほうを睨めば、めぐは「こっわ」とわざとらしく身震いをしそそくさと自分の席へと戻っていった。

私はそんなめぐの背中に視線を向けながら「ばーか」と思い切り顔を歪めた。




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