約束 ページ30
残暑の厳しいはずの屋上も、なぜか暑さは感じない。
今が1番暑い時間帯のはずなのに。
斗真が意を決したように振り向いて、俺を見つめてゆっくりと呟いた。
「…部活、辞めたって聞いたから、どうしたのかと思って。連絡しても携帯出ねえし。」
…言われて、返答に迷った。
いろんなことがあって、俺はあれからすぐ部活を辞めていた。
結構突発的に、混乱したままで下した決断だったけど、今となっては後悔はしてないのが本音だ。
一度だけ顧問とも話したけれど、流石に事情(もちろん能力のことは抜きで)は校長から伝わっているらしく、そこはあっさり承諾してくれた。
いろんなことがありすぎて、正直それどころじゃなかったんだ。
携帯も、ここのところ携帯が無くても十分に生活ができていたものだから、そもそも存在を忘れていた。
「…あー、えーっと。」
…全てを伝えるわけにはいかない。
「夏休み、いろいろあってさ…」
こんな当たり障りのないことしか言えなくて。
言い淀みつつ、なんて伝えるか迷っていると
斗真は俺が言いたくないと思ったようで
「…ごめん、無理に言わなくていいよ。
こんなところに連れ出しちゃって悪かったな…」
そう言って、斗真は俺を屋上から連れ出した。
「…俺はいつでも話聞くから。大変なこととか辛いこととかなんでも聞くからさ。だから…」
斗真は俯いていて、表情は見えなかった。
「いつでも、連絡してくれよ。」
ポンと肩を叩かれ、少し寂しそうに斗真が笑う。
「じゃあ、またな。」
遠慮がちに手を振って廊下を駆けていく斗真を、俺は何も言えずに見つめていた。
…
ニノと翔さんが不思議そうに見つめる中、部室に帰ってすぐケータイを探し回った。
結局、例のものは隅っこのロッカーの上に無造作に置かれているのが発見されて
充電をしつつ確認すると、確かに着信とメールがそこそこの件数入ってて、日付も夏休み最初の方だった。
ゆっくりと一件一件目を通していって、最後の1つに目が止まる。
…届いた日付は、昨日のA.M.0:00ちょうどだった。
「誕生日、おめでとう。斗真」
それだけ、書かれたメール。
ぎゅっと携帯を握ると、目頭が熱くなって慌てて目をこすった。
「ありがとう…」
震える声でそう呟いて、瞬きを繰り返す。
そうでもしないと…涙が溢れて止まらなくなりそうだった。
夏の風がふわりと髪を巻き上げる。
…予想外の再会と共に、夏休み最終日はゆっくりと過ぎていくのだった。
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くろねこ(プロフ) - 柊さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて何よりです(*^^*)今後ともどうぞよろしくお願いします！ (2022年1月3日 21時) (
レス) @page31 id: 5b6f3182f9 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - コメント失礼致します。『約束』の斗真くんの「誕生日おめでとう」に涙腺崩壊しました。大好きです。 (2022年1月2日 1時) (レス) @page31 id: 9a230f5c32 (このIDを非表示/違反報告)
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