∂ ページ43
思っていたよりも、相葉さんの説明はわかりやすかった。
図鑑を見ながらとは言えすらすらと僕に説明してくれる様からは、いつものおっちょこちょいな相葉さんの面影はない。
「うーん、どう？とりあえずメジャーなのは教えたけど…あんまり量が多くても覚えらんないしなあ。」
確かに、教えてくれたのでも10いかないくらいだけど
僕の頭はパンク寸前。
「じゃあそろそろ帰ろっか。寒いから風邪ひいても大変だし…」
腕時計を見て相葉さんがそう提案したから、僕も頷いて賛成しくるりと体の向きを変える。
まだ4時くらいのはずなのに太陽が既に傾いていた。
「もうめっきり寒くなったねえ。」
相葉さんが足元でひゅるひゅると風に揺られる枯れ葉を追いかけて踏むと、それはクシャリと音を立てて粉々になった。
「秋ってなんか寂しくなるなあ…嫌いな季節じゃないけどさ。」
街路樹たちは葉っぱを落とし始め、もう既に禿げかけてしまって、僕もなんか悲しくなる。
「ま、秋だっていいこともあるよね。ほら、食べ物は美味しいし。」
僕たちの歩く隣を石焼き芋のトラックがすれ違う。
なんだかんだ相葉さんはどんな季節だって楽しんでいるんだろう。
冷気を孕んだ風が僕たちを追い越して消えていく。
「今日の夜ご飯何にしよっか…リクエストある？」
相葉さんがスタスタと歩き出して、たぶん向かう先はいつものスーパーで。
何がいいかなあ。でも、やっぱり…
「ハンバーグ。」
「カズに聞くとそればっかりだなあ…」
即答する僕に、苦笑いする相葉さん。
だってハンバーグが好きなんだもん、こればっかりはしょうがない。
「ま、いっか。最近作ってなかったし。ハンバーグにしよ！」
メニューが決まってやる気が出たのか、僕の手を引っ張って駆け出す相葉さん。
「ちょ、だから！走んなくったって…！」
冷たい空気が顔に当たってちょっと痛いけど
それでも体はだんだんポカポカしてきて
相葉さんの笑い声が聞こえて、つられて僕もいつのまにか笑っていて。
僕たちの周りだけ寒い空気はどこかにいったみたいなそんな感覚がした。
…
「…重い。」
「あひゃひゃ！いやー、カズがいて助かったよ！」
5人分の食料ってこんなに重いのか…？
文句を言いつつも心の中では、いつも何も考えずに食べていたことを反省するのと共に相葉さんに感謝をして。
両手にスーパーの袋を持って2人並んで家への道をしばらく歩いていると、不思議な匂いが僕の鼻をくすぐった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 474人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
