∂ ページ42
「え、ちょっ…リーダー！」
こういう時、無駄に大野さんの足は速くて
慌てた相葉さんが呼んでも、もう姿は見えなかった。
「うーん…じゃあ、しょうがないし…カズ、散歩行こっか。」
困り顔の相葉さんは、秋用のコートを2着持ってきてひとつを僕に渡した。
「…何ですか、それ。」
大野さんの思考を図りかねて尋ねると、相葉さんが「ああ…」と呟いて
先程手渡されたそれを僕に渡してくれて
見るとそれはどうやら植物の図鑑で、僕も小さい頃に何度か読んだことがあった。
「うーん、きっとカズに秋の植物教えろってこと…なのかな？」
一部のページに付箋が貼ってあってそこを開くと、それは『秋の植物』のページ。
確かに、言葉足らずな大野さんが伝えたかったのは相葉さんが言っていたことで間違いはなさそうだった。
「じゃあ行こう！準備できた？」
「んー…ちょっと待って。」
適当にコートを着て、窓の外を見ると
ヒュウッと風が音を立てて枯れ葉が舞っているのが見えた。
「外って寒い？」
「んー…あ、今日木枯らし1号が吹くかもとかって言ってたな…
そうだ。カズ、こっちおいで？」
大人しく相葉さんの方に近づくと、くるりと何かが首に巻かれる。
「マフラー貸したげる。うん、似合うよ！」
にっこり笑顔でぽんぽんと肩を叩かれる。
黄色ベースに黒のタータンチェックのマフラーのおかげで体がポカポカした。
「よし、じゃあ行こうか！」
相葉さんの元気な声に僕は頷いて、一緒に玄関を出た。
…
「教えるっていっても何からがいいのかなあ…
とりあえずわかりやすいのからいくか。」
相葉さんに連れられて来た先は近所の土手。
夏には鬱蒼としていた細長い葉っぱの植物は、いつのまにか勢力を失って枯れかけていた。
「これがススキ。お月見の時にお団子と一緒に飾るやつね。」
相葉さんが指差したそれは、ふわふわした細長いのが付いた植物。綿毛みたいであったかそうな感じだ。
「で、このかわいいピンクの花がコスモス。漢字だと秋の桜って書くんだって。」
今度は少し小さめのかわいい花。
葉っぱも細くて小さくて、何だかか弱い感じだ。
「で…あれはヒガンバナ。葉っぱは無いみたいに見えるけど、花が枯れてから出てくるんだって。あと毒があるから気をつけて。」
今度は真っ赤で細いけれど存在感を放つ花。
目を引くけど有毒だと聞いて、触ろうとしていた手を慌てて引っ込めた。
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