∂ ページ40
「…なんで教えてくんなかったんだよ。」
花屋を後にして、相葉さんに文句を言う。
外出するのが好きで自然のことも詳しい相葉さんなら
あれは季節の花だったって知ってたはず。
「…教えなかったのは、ごめん。でも…俺が口で説明してもカズは納得しないだろうなって思って…」
気まずそうな相葉さんの言葉に、何も言えずに俯く。
…たしかに、頑固な僕のこと
相葉さんの言う通りかもしれなくて。
それでもモヤモヤして、何故だか無性に悔しくて
僕は何も言わずにプイッとそっぽを向いた。
「…どうする？他のお店も回ってみる？」
相葉さんが気を使ってかそう提案してきたものの、僕は黙って口を尖らせているだけ。
そんな僕を見て相葉さんが困っておろおろしているのが雰囲気でわかったけど、むしゃくしゃしていた僕はそのままスタスタと歩いて相葉さんを置いてけぼりにした。
「…カズ、待ってよ！」
一定の距離を保ちながら、相葉さんが僕の後ろをついてくるけど
僕がそのまま何も反応せずに歩いているからか、相葉さんはそれ以上話しかけては来なかった。
…
「ただいまぁ！」
そんなこんなで、結局そのあとどこにも寄らずに帰ってきて。
元気よくドアを開けた相葉さんに続くように玄関に入ると、ひょっこり顔を出して翔さんが出迎えてくれた。
そのまま翔さんの前を通り過ぎようとすると、グイッと腕を掴まれて低めの声で名前を呼ばれる。
「おいコラ、カズ。挨拶はちゃんとしないとダメだろ？」
礼儀や作法に対しては、翔さんは他の2人よりも厳しかった。
黙って肩を竦めると、今度こそ本気で睨まれて正直ちょっと怖くて。
「…ただい、ま。」
「はい、おかえり。」
恐る恐るそう言うと、翔さんは俺の頭をポンと叩いて自室へと戻っていって。
それを見送ると、僕はホッと息を吐き出した。
それから洗面所で手洗いとうがいをしてリビングに戻ると、ソファで寛ぐ相葉さんと…その隣には雑誌を読むジュンくん。
「あ…」
思わず僕の口から声が漏れて、それに反応して顔を上げたジュンくんとパチリと目があった。
ジュンくんは気まずそうに視線を外すと、読んでいた雑誌を閉じて小脇に抱えてソファから立ち上がる。
そしてこちらを見ずに、まるでネコみたいに俊敏に2階へと消えていった。
「…もう！」
一部始終を見ていた相葉さんが呆れて溜め息をつく。
だけど、自分が播いた種とはいえ
溜め息をつきたいのはこっちも一緒だった。
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