☆ ページ23
道中、俺たちは慣れない道に四苦八苦。
下見をしていたとは言えそれは昼間だし、真っ暗闇の中能力を解放せずに歩くのはなかなか大変で。
慣れてないカズとジュンは尚更で、木の根に足を取られたり、風で揺れる植物の音にビクついたりでなかなか進めない。
2人のことを励ましながら何とか登る俺も、低い枝が顔面に命中して情けない声をあげちゃって、2人に笑われたりもして。
登り始めて1時間後には、とりあえず頂上付近にまでたどり着くことができた。
「やった！いちばーん！」
坂の終わりが見えるとジュンは急に元気になって
ダッシュで駆け上がり、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。
「あー…やっと着いたぁ…」
一方、急峻な坂を登りきったカズは、大きく息を吐く。
同じ双子でも、反応が全然違う2人だ。
そんな2人を連れて、下見をしたスポットへと歩く。
「2人とも、見てごらん。」
「うわあ…」
急に開けた視界。
山の端っこ、崖みたいになっている一部の場所だけ木々が生えてなくて
空も街も全てが見渡せる場所。
カズとジュンは目をまん丸にして、そのまま何も言わずにその景色を見つめていた。
…満天の星、とまではいかないけど
この街の中では、一番の絶景スポット。
夏の大三角のベガやデネブやアルタイルも
さそり座のアンタレスも
へびつかいも英雄ヘルクレスも
夜空で輝いて見える。
「…すごいねぇ。」
カズが静かに呟くと
「星に手が届きそう。」
ジュンは腕を空に伸ばして笑う。
「…こんなに見えるなんてな。」
地図上だけではわからない景色に、俺も思わず感嘆の息を漏らした。
…
「あれが夏の大三角で、あれが織姫、あれが彦星…」
「三角の真ん中を突っ切ってるのが天の川。
で、さそり座は下の方にあるあの赤いのか…」
カズとジュンは仲良く星空を見上げながら正座を上手に探している。
もはや、俺の出る幕はなさそうだ。
…でも、やっぱりちょっと悔しくて、俺は少しだけちょっかいを出すことにした。
「ジュン、北の空はどっちだ？」
「へ？北？」
ジュンはキョロキョロと空を見上げて眉を寄せる。
「太陽が出てればわかるんだけど…」
ううんと唸るジュンの隣で、カズは俺とジュンの顔をちらちら伺いながらくふふって笑った。
「あっち。」
迷いなく、カズは一点を指差して続ける。
「北の空には、数ある星の中で唯一の星があるからね。ね？翔さん。」
ニヤリと笑うカズに、俺は完敗と両手を挙げた。
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