☆ ページ18
雅紀の不安を、気のせいだなんて一蹴することはできなかった。
だって、一番それを感じているのは雅紀だし
気のせいかもしれないと思いながらも俺らに伝えてくれたんだ。
「ただの負け惜しみかもしれないし、かと言って全く気にしないわけにもいかないね…」
智くんも判断を迷っているみたい。
「まあでも、今のところは平気なのかな…
復活っていうのがどういう意味で言ってるのかは知らないけど、警察だってみすみすヤツを逃がすような真似はしないだろうし。」
「そうだよね…そこにまた現れるとしても、さすがに今すぐは無理でしょ。いくら能力者って言ったって、できることには限りがあるしね…」
ひとつひとつ考えながら言葉を繋げていく。
…能力者と言えども、所詮は人間だ。
それに、アイツは姿を消せるわけでもないし瞬間移動だってできない。
捕まってすぐさま逃亡を成功させて暴れまわれるとは、現実的に考えにくい。
「とりあえず、油断しない程度に気をつけとこう。
今日雅紀が行ったこの地区には、余程のことがない限り近づくの禁止。」
智くんが地図を眺めて俺たちに指示をした。
「あと、そうだ。星のことだけど。」
ちらりと智くんがこっちを見た。
その瞳は、ゆらゆらと複雑に光っている。
「見に行ってもいい…けど、この地区から離れたところでね。場所は翔くんに任せる。」
静かにそう言うと、智くんはゆらりと立ち上がって部屋を出ていった。
いつも通り、気にしてないようなフリして。
「…うん。」
唸るように声を漏らして、俺も立ち上がる。
そろそろ、俺も寝よう。
「翔ちゃん、おやすみ。」
立ち上がった俺に、雅紀が後ろから声をかけてくる。
振り向けば、いつも通りのひまわりみたいな笑顔で。
「うん、おやすみ。雅紀も早く寝なね？」
「翔ちゃんありがと。俺もシャワー浴びたらすぐ寝る！」
また明日、とお互い笑って。
どこかぎこちないのは2人とも気にせずに
それぞれ動き出す。
…気にしすぎたって、どうしようもない。
3人ともそれはわかってるはずだから。
「おやすみ。」
誰に言うでもなくそう言えば、言葉は夜の闇に溶けていく。
寝室に戻りベッドを見れば、智くんが既にスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。
…ほんと、変わらないよなあ。
その寝顔を見て思わずクスッと笑うと、俺も隣のベッドに潜り込んで目を閉じた。
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