瑠璃色の空～特別編～ (ページ11)

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…そのうち、Aの家にいる時間が徐々に増えていった。

毎日通ううちに少しずつ本を読めるようになり
Aには劣るけど、それなりに英語も理解できるようになっていた。

…楽しかった。

毎日が、いろんな色で彩られていて。

…

春休みも終盤に近づいた、ある日。

今日はポカポカした穏やかな陽気の、雲ひとつない青空の日。

そんな今日も、俺はまたAの家にいて。

英語の勉強もそこそこに、俺はうとうととうたた寝をしていた。

暖かな春の日差しに、ぼんやりと瞼を開けた…

ふわ、と俺の体に触れたのは

「…A？」

Aが、俺に頭を預けて目を閉じていた。

さらりと綺麗な髪が顔にかかっていたから、顔が見えるように避けてあげた。

「…ずうっと、こうしてられたらいいのにね。」

きゅ、とAを抱き寄せる。

ふわりとAの匂いが鼻をくすぐる。

「…大好きだよ。」

…少しの距離も、許さない。

ぐいっと引き寄せて、唇に触れた。

…そっと、優しく触れるだけのキス。

Aが、ゆっくりと目を開いて、驚いた表情を一瞬したけれど、それもすぐに微笑みに変わった。

「…智さん。」

ゆっくりと、Aが俺の名前を呼んだ。

「…私も」

言葉の続きは聞こえなかった。

気づいたら、もう一度唇がくっついていたから。

時間が止まったみたいだった。

永遠なんて存在しないけど

この瞬間だけは、永遠に続けばいいのになんて…

窓から入ってきた春風が、俺たちを優しく包む。

ふわりとお互い顔を見合わせて笑った。

うららかな春の日。

ポカポカとした暖かさと

輝くような幸せで満ちていた。

…

しばらくの間、窓際で2人寄り添っていた。

「…智さん。」

静かに、Aが俺の名前を呼ぶ。

「…うん。」

…わかってるよ。

「…ずっと、こうしてられたらいいのにね。」

Aは何も言わなかった。

…Aは、静かに涙を流していたから。

「…私、帰らなくちゃいけなくて。父の仕事先のイギリスに。
春休みの間だけ、こっちにいるって約束したから。」

「…うん。」

何となく、わかっていた。

彼女は日本語よりも英語が得意なんだろうな、ってのは。

幸せは長くは続かない。

わかっていても、鼻の奥がツンとした。

「…大丈夫、きっとまた会えるよ。」

目を見てしっかりとそう言えば、Aは目を潤ませて頷いた。