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大野side
「いい天気だね〜」
買い物も終わり、2人でのんびり歩く帰り道。
街のいろいろな場所で桜が咲いていて、ピンク色に染まって綺麗だ。
「うちの近所も、もうすぐ満開かもしれないね！最近天気良かったし…」
翔くんが空を見上げ、手を伸ばす。
春風が吹いて、俺たち2人の間を通り抜けていった。
いつもの歩き慣れた道だけど、こうしてゆっくり歩くのもいいな…
時間に煩わされないのは、何といっても気持ちがいい。
「今度さ、みんなでお花見しようよ！
もしかしたら雅紀と潤は賛成してくれないかもしれないけど…」
俺は舞い散る桜を見ながら翔くんに提案した。
ふわり…
俺と翔くんの髪が靡く。
「うん、みんな誘ってお花見行こうか！」
翔くんの笑顔も、ピンク色に染まる。
俺たちの目の前を、野良猫がにゃあと小さく鳴いて通っていった。
…
ぽかぽかした陽だまりの中、2人並んで歩く帰り道。
この前まで冬だったのに、もうすっかり季節は春だ。
…春はいい。
冷たく厳しい冬は、心も体も縮こまってしまうけれど
春の暖かさが、それを溶かしてくれる。
「お花見、どこに行こうか？近くだったら…」
翔くんが楽しげに隣で考え出すのを、俺は穏やかな風景を眺めながら聞いていた。
ふわり…
柔らかい風が頬を撫でる。
目の前の角を2人で曲がった…んだけど。
「前に行った…ほら、和と潤が小さかった頃に一緒に行った公園にしよっか！」
隣にいるはずの翔くんの声は、俺には聞こえてなかった。
なぜって…
「…A？」
ありえない。
そんなのって、ない。
だけど…
白い帽子を被った女性が
近くの家から出てきた。
その彼女は、Aと瓜二つで…
ふわり…
風が女性の長い髪をなびかせる。
「じゃあね！」
玄関に立つ友達だろうもう1人の女の子に
彼女はひらひらと手を振ると、くるりと前を向いて歩き出した。
「嘘だろ…」
信じられない。
だって、Aは…
「でも…」
頭ではわかってる。
それなのに…
…
遠ざかっていくその女性に目を奪われていると…
「…智くん？」
翔くんの手がポンッと肩に置かれ、驚いて体をビクつかせると、翔くんがゴメンと謝った。
「智くん、そんなぼーっとして…大丈夫？」
翔くんの言葉に、俺は曖昧に頷くしかなかった。
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