I'm a fool of love for you

ハッピーバレンタイン ページ46

2月14日


バレンタインデー


今日がその日だって先週から気づいてた


Aは毎年

「ついでにあげる」

そう言ってチョコレートをくれる
なんのついでかは知らない

でもチョコは好きだし、Aも好きだし

ここ数年は俺にとって“いい日”という認識だった


でも今年はAにとってもいい日になればいい



「今日ちょっと残るから先に帰ってて」

「分かった」


Aはあっさり承諾して帰っていった

「よし」

Aが会社を出たのを確認してから俺も出る


「あ」

今日はあのバンドの新譜が出るんだった

さっそくダウンロードして再生

電車では花について検索した



俺たちの最寄駅について改札を出たら向かう先は花屋

Aが時々行く店

いつもはこの時間 並んだ花は少ないのに今日はバレンタインデーだからかまだたくさん残ってる


「いらっしゃいませ」

「バラの花束が欲しいんですが」

「バラは売り切れてしまいまして…」

「あ〜…」

店内を見渡すとさっき電車でみた花があった
バラよりも柔らかそうでAに似合うと思う

「じゃあ、これとこっちの花も使ってください」

「かしこまりました」


花束を作ってもらっている間 店内を見て回る

見たことある花
名前だけ知っていた花
知らなかった花


幼い頃を思い出す

毎年バレンタインに父さんが母さんに花束を贈っていて
ふたりがとても嬉しそうにしていたからよく覚えている

一度、父さんについて花屋に行ったことがある

「お母さんはこの花が好きなんだ」

そう教えてくれた父さんの顔はとても嬉しそうだった

あの頃はなんで父さんが嬉しいのかわからなかったけど 今はよくわかる
きっと父さんは今日もあの顔をしているんだろう



「お待たせいたしました」


店員さんが抱えてきた花束を見てつい口角が上がる



柔らかい花が風に吹かれないように気をつけて歩く

その道中 ずっとAの顔が浮かんできて

これから先、この花を見る度に俺はAのことを思い出すんだろう


「ただいま」

「おかえり〜」


甘い匂いがするキッチンで何かしていたAは振り返ると視線を俺の顔から少し下のところで固定した


「いつもありがと」

「うそ、バーノンが自ら花束を…？母の日？」


花束を抱えておどけて見せるAの頬はピンクに染まっている


「好きだよ」


「私も！」









I am dazzled by your charms

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す