ウィスキー、ロックで

禁酒46日目 ページ46

レストランに入る前に預けた荷物はすでに運ばれてる


そうだ
プレゼント渡さなきゃ


丸いローテーブルに置かれた紙袋を手に取る


振り返ると部屋の入り口で壁に左肩と頭を預けて立っていて

私ひとりだけがテンパってるんだって誰が見てもわかる


「これ、よかったら受け取ってほしいんだけど…」


「プレゼント？ありがとう嬉しい 開けてもいい？」


大きなソファに座って
私を横に座らせる


「スマホケースだ！ ありがとうずっと付ける」


早速ポケットからスマホを出してケースを付け替えてる
いつも身近にあるものだから喜んでくれてよかった
そのお店入るの緊張したんだよ

いろんな角度から観察をした後
ローテーブルにスマホを置いてこちらに向き直って私の手を取る


「ネイルかわいいね Aに似合ってる」

「ありがと」

「今日のためにしてくれたの？」

「うん」

「楽しみにしててくれんだ」

「うん、そうだよ」

「髪もいつもよりツヤツヤじゃない？」

「さっき美容室行ってきた」


手のひらを撫でられてくすぐったい
やめてほしくて そのままチャニの手をぎゅっと握るともっと強く握り返される


「A 緊張すると下唇噛むよね」

ハッとして口を結ぶ



その瞬間

唇に触れたのはチャニのそれ

驚いたけれどまた手を撫でられて

目をつぶって受け入れる

啄ばむようなキスをして

おでこをひっつけてチャニが言う



「今からは唇噛まないで 危ないから

噛みたくなったら 俺のこと噛んで」









．


私たちを遮るものはなにもない

体温があがって香水の匂いが強くなった


あ、




『ね、こうしてもいい？』



なかったはずの記憶と重なる



『つらくない？』



そっか
ここにあったんだ


「好きだよ、チャニ」


泣きそうな顔をして私の首元に顔を埋めた








．

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