ウィスキー、ロックで

禁酒33日目 ページ33

一緒にいるための努力がしたい


チャニはそう言ってくれた

私はもう何も言えなくてただ涙が止まらない


「泣かないで〜
あ、いや泣いていいよ」

「どっちなのぉぉ」


私は鼻をすすって
チャニは私を抱き寄せて背中をさすってくれる

香水のにおいが詰まった鼻を通り抜ける


「泣いていいよ
俺の前でだけたくさん泣いて

ひとりでは泣かないで」


その言葉にもっと涙があふれて
チャニの背中に腕を回して泣いた


「大丈夫だから」


小さい子に言い聞かせるみたいに言って
ずっと背中をさすってくれた

みっともなく長い時間泣いて
我に返る

座って抱き寄せられると
二人分の足が間にあって変な体制になるから腹筋がしぬ

そんで鼻水が垂れそう

「あ」

「ん？」

耳元で聞こえる甘い声
背中をさすってた手が促すように二回トントン

「鼻水ついた

ごめん」

空気読めなくて


腕を解いてチャニの肩に手をついて離れる
泣いてぐちゃぐちゃになった顔を披露するのはさすがにためらいがある

顔をそらしながらティッシュを引き寄せて鼻水を拭く

出来れば見ないで欲しいんだけど 心配そうにこちらを見てるチャニの服についた涙と鼻水の跡も拭かなくちゃ

腕を伸ばすと手首を掴まれて

「泣き顔も見せて」

至近距離で顔を覗かれる
驚いているとチャニがおでこにそっとキスした

「かわいい」

もっと驚いて掴まれてない手でおでこを隠す

その手も掴まれて顔がむき出し
しばらく無言で見つめられて 私はとてつもなく不安な顔をしてると思う

「…キスしてもいい？」

「だっ だめでしょ」

「だめなの？」

そんなキョトンとした顔で言われても

「だめでしょ」

「なんで」

「私まだ何も返事してないし」

「そっか」

これで納得するんかい
とりあえず手を離してくれてよかった

少し後ろに下がって距離をとって 姿勢を正して座り直す


「チャニがそんな風に考えてくれてるなんて知らずにひとりで抱え込んでた

でもそうだよね
ふたりのことだから
ふたりで一緒に考えるべきだったね」


チャニも姿勢を整えた


「うん」


「うん、そうだね


私たち一緒に居てみよう」


そのためには弛まぬ努力が必要になるけど
何もしないで後悔はしたくない


「ちょっと なんで泣くの〜」

今度は私のセリフだった

「だってやっと言ってくれたから」

「泣かないでよ〜」

「じゃあキスしてもいい？」

「それは無理」




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