虹色のお話 (ページ7)

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コトンと目の前にグラスが置かれる音がし、照史が顔をあげると量が少ないショートドリンクが置かれていた。

無色透明で中に入っているのは所謂カクテルオニオンとかいうやつだろう。
さながら水に浮かぶ1粒の真珠のようで淳太の白い肌を連想させた。

 「ギブソンです。」

－やや度数は高いですが今のあなたにピッタリだと思います

変わらず優しいバーテンダーの声が店内のジャズと静かに重なった。

その言葉通り1口含むとアルコール独特の匂いが鼻に抜けるが、甘味の少ないその味は好みの部類に入るものだった。
ショートドリンクであるが故に早々に飲み干すと、今の自分にピッタリだというバーテンダーの言葉が気になった。 

「美味いです。
ところで今の俺にピッタリって？」

「カクテル言葉というものは知っていますか？」

目尻に皺を作ったバーテンダーが返したのはそんな言葉だった。

聞いたことはないが花言葉のようなものだろうか、と答えるとバーテンダーは笑顔で頷いた。

 「ギブソンのカクテル言葉は－－－」

  照史はガタンと席を立ち、お代はいくらかと問いかけた。 

「お代は結構です。それよりも今の気持ちを行動に移してください。」 

「そうですか、ありがとうございます！この代金はいずれまた！」 

彼によく似た笑顔で告げられた言葉に疑問を抱くことなく照史は足早に店を出てスマホの通話アプリを開いた。
 焦る手で目当ての連絡先を見つけ電話をかける。  

「なあ淳太くん！今から時間ある！？」 

『えっ照史？別にええけど、どうした？』

 「今から淳太くん家行くわ！」 

『急やな！？分かった待っとる』  

手短に通話を済ませ夜の街を駆ける照史の顔は晴れ晴れと何かを覚悟したようだった。